権力をふるい、威圧的な態度で自分の意見を押し通す上司や、お客様の横暴な振る舞いに心も身体も疲れきってしまう。
そのようなお話を伺う事があります。
職場などに横暴な振る舞いをする人がいると、心が荒んでイライラしてしまったり、自尊心も傷ついて落ち込んだり、相当なストレスを感じますから、なんとかその状況から抜け出したいと思うものです。
横暴な振る舞いの人とは、距離をとって関わらない方が良いと思いながらも、仕事での人間関係だとしたら、全く関わらない訳にもいきません。
横暴な人に対して怒りを感じて無愛想になったり、自分自身が我慢の限界を超えてしまい職場に行けなくなってしまうかも知れません。
どちらにせよ、苦しい思いをする事に変わりありません。
今回は、横暴な振る舞いの人との関わりで、できるだけ苦しまない考え方を2つ紹介します。
【1.どうして横暴な態度になってしまうのか理解する】
気分がいい時に横暴な態度になる人はいません。
人が横暴な態度になってしまう時は、不安や恐れ、劣等感や孤独感といったネガティブな気持ちが隠れている場合がほとんどです。
また、炎天下のなか渋滞に巻き込まれた人達が銃で撃ち合いになったというアメリカで起きた痛ましい出来事から、「人は欲求不満になると攻撃的になる。」という研究発表さえあります。
横暴な態度になっている人は、相手の人間性をも否定するような攻撃的な態度で接してくる事もありますから、そのような態度を受けた方は、殺意を覚えるほどの怒りを抱いたり、「自分が悪いのか?」「自分が間違っているのか?」と考えて落ち込んでしまったり、嫌な気分になってしまいます。
その嫌な気分を少しでも和らげるために、横暴な相手のことを理解することが大切になります。
もちろん欲求不満やストレスがあるからといって、攻撃的で横暴な態度になって良いというものではありません。
「どうして横暴なヤツのことを、私が理解しないといけないのだ!?」と言いたい気持ちになりますが、横暴な相手のために理解するのではなく、嫌な思いをしている自分自身の心のために相手を理解するのです。
横暴な人に対して「あの人は何かしらのストレスを抱いている」という見方を持つことで、必要以上に自分自身を責めなくて済みます。
例えば、
「上からのプレッシャーが強いのかも」
「プライベートが上手くいっていないのかも」
「不安や恐れを抱いているのかも」
と、どうしてそのような態度になってしまうのかに意識を向けて、自分だけに非がある訳ではないことを理解する事が必要になります。
カウンセラーには「攻撃は、助けを求める声」という考え方がありますが、攻撃的な相手を理解するためだけでなく、カウンセラー自身の心を守るために重要な考え方でもあるのです。
【2.自分が何故そう感じるのかに意識を向ける】
横暴な振る舞いの人に対して、怒りを感じる人もいれば、恐怖を覚える人もあるでしょう。
しかし、なかには上手に付き合っている人もあるのではないでしょうか。
それが、上司、同僚、部下、はたまた家族や友人、もしくはパートナーなのかは分かりませんが、適切な距離感で、そこまで強いストレスを感じることなく関われている人もあるはずです。
横暴な人に対して腹が立ったり、怖くて萎縮してしまったりする気持ちは分かりますが、怒りや恐れをそこまで感じずに関われる人が居ることを考えると、どうして自分がイライラしたり、怖くて動けなくなってしまうのか、自分自身が何を感じているのかに意識を向けていくことも大切です。
もしかしたら、自分自身の中に
「権威的な存在に対する恐れや満たされない気持ち」
「自分自身をちっぽけに扱うような否定的な気持ち」
「誰かを助けたい優しい気持ち」
などが隠れているのかも知れませんね。
そんな気持ちと向き合い、見方や捉え方を変えることで感じ方が変わります。
相手を変えようとしても、相手を変えることはできません。
それよりも自分自身の考え方や感じ方を変えていく方がよっぽど可能性がありますし、現実的なのではないでしょうか。
自分と向き合うことで、過酷で厳しい状況から抜け出せるヒントが見つかるかも知れません。
【最後に】
人には、“好意の返報性”(こういのへんぽうせい)というものがあります。
好意を向けられると、好意を返したくなる気持ちです。
それとは逆に、悪意を向けられると、悪意で返したくなる“悪意の返報性”というものもあります。
そんな“悪意の返報性”というネガティブなサイクルを終わらせるために、横暴で敵意を向けてくる人に対しても笑顔で接することが出来れば、少しずつかも知れませんが状況が変化していくのではないでしょうか。
笑顔は、とても分かりやすい好意ですからね。
関わりにくい人との人間関係で、少しでも心が軽くなるヒントになりましたら嬉しく思います。