「周りの人に迷惑かけたくない。他人に甘えちゃダメ。」
と、自分に対しては「もっとできる。もっと頑張れる」と追い込みをかけるのに、周りに困っている人がいると放っておけないし、頼られるといやと言えず他人の仕事まで引き受けてしまうA子さん。
気がつけば心も体も自分の限界を超えて頑張りすぎてしまい、「なんでわたしばっかり・・」とイライラしてばかりの毎日。
今日はそんなA子さんを例に、「がんばってるのに気づけばいつも損な役割を引き受けてしまう」のルーツについて考えてみたいと思います。
1)親の役に立ちたかった子ども時代のA子さん
A子さんは長女。弟と妹がいます。
両親は共働きだったので、小さい頃から兄弟の面倒をみたりお手伝いをしたりしていました。
小さい頃は
「おねえちゃんなんだから我慢して!」
「おねえちゃんなんだからしっかりして!」
と言われることも多かったと言います。
A子さんに限らず子どもは親の役に立ちたいと思います。
親を喜ばせたいのです。
そのために、「いい子」になったり、「がまん」したりして、「いい子だね〜」「よく我慢したね〜」と認めてもらいたいと思います。
A子さんは忙しい両親を見ていて、何か役に立ちたいと思い、すすんでお手伝いをするようになりました。また、自分より幼い弟や妹と遊んだり、お世話をしたりするようにもなりました。
A子さんにとって、それらのことは「嫌なこと」ではありませんでした。
お母さんやお父さんに褒められたり、認められたりすることがうれしかったのはもちろんのこと、家族の役に立っている感覚が心地よかったり、弟や妹がかわいかったりしたからです。
役に立ててうれしい。かわいいから、面倒をみたい。喜んでくれるのがうれしい。
そのためならちょっとくらい自分の気持ちは後回しにしてもいい!
そんなA子さんの子ども心、私は優しいなぁ、かわいいなぁと思います。
とても子供らいい愛のカタチです。
2)わたしに力がないからお母さんやお父さんが笑顔にならないの?<「もっとがんばる」のルーツ>
ところが、どんなにがんばっても、お父さんやお母さんはちっともラクにならない。
どんなにがんばっても、ちっとも笑顔にならない。
そんなことが続いたとしたら、子どもはこんなふうに感じてしまうんです。
「わたしの力が足りないからだ」
子どもの思考はまだまだ未発達。
大人のように客観的なものの見方をすることができません。
だから、全部自分のせいだと感じてしまうんですね。
そして、「自分の力が足りないなら、もっと頑張ろう、もっと我慢しよう」と考えます。
3)わがままや迷惑が許されるのはどうして?<「がんばってるのに報われない」のルーツ>
そうやって必死で頑張って我慢しているA子さんの前でこんな出来事が起こります。
弟
「ママ〜、オレこれ嫌〜い!」
母
「もう、しょうがないわね。残していいわよ」
A子さん
(心の中で)「えーーー、お母さんいつも好き嫌いしちゃダメって言ってるじゃない。だから、わたし、苦手なしいたけも食べてるのに!」
妹
「えー!それ、私がやるの?宿題やんないといけないし、ムリ〜」
母
「え、そうなの?じゃあ、おねえちゃんお願い!」
A子さん
「え?(わたし??でも、お母さんも大変だしなぁ)う、うん。いいよ」(私だって宿題あるのに〜)
自分がいい子にしていないとお母さんが困るだろうと思って、苦手なものも我慢して食べ、自分の用があっても、お母さんのお手伝いをするのが当たり前だったA子さん。
それなのに、その「当たり前」を無視して「嫌い〜」と言ったり「ムリ」と言ったりする弟や妹。
自分が大事にしていたルールを目の前で堂々と破る人(弟・妹)が現れ、その言い分が通るという出来事が起こった時、A子さんの心に混乱が起こります。
わたしが大事に守ってきたものは何だったの?
お母さんがラクになると思って頑張ってきたのに・・。
どうして弟や妹は「嫌」とか「ムリ」って言っても許されるの?
なんだかズルイ。
なんでわたしだけ我慢したり、ムリしたりしないといけないの?
と自分の努力や頑張りが否定されたような気持ちになったのです。
4)愛や優しさを犠牲に変える「○○しなければ」という思い
小さい頃、A子さんは、「自分がお母さんやお父さんを助けてあげたい」と思いました。
でも、なかなかうまくいかなくて「もっと頑張って助けなきゃ!」と感じたのです。
ところがこの「助けなくっちゃ!」という思い込みがA子さんの我慢やムリを強化することになったのです。
「○○しなければ」と頑張るのは苦しいです。
誰かのために「○○しなければ」とがんばることを犠牲と言います。
犠牲を続けると燃え尽きてしまいます。
5)気がつけばまた前と同じ(子どもの頃に作られた心理パターンが今の問題を作っている)
A子さんは、家族の中で「お母さんやお父さんのために」とがんばったり、「お姉ちゃんだから」とがんばってきたので、その心理パターンが学校や会社でも繰り返されるようになっていました。
このように、子ども時代に作られた心理パターンが土台となって、目の前の問題が生まれることは少なくありません。
※カウンセリングでは、こういった心理パターンに着目して、そのパターンを変えていくというアプローチを用いることもあります。
「そういえば、今と同じような気持ちによくなるなぁ」という時には自分の持っている「心理パターン」を見つけ、変えていってもいいかもしれませんね。