不倫相手と別れてとお願いするのはコントロール?

相談者名
クーニャンコ
60歳代後半の夫婦の妻です。
子ども2人は、それぞれ独立して暮らしています。夫の不倫が発覚してから3年になります。
経済的には自立できるので、離婚も考えましたが、夫のことが嫌いになれないし、一人で生きていくのは寂しいので、関係を再構築しようと、神戸メンタルサービスの動画を見たり、カウンセリングを受けて努力してきました。

8ヵ月前に初めて夫に対し、不倫を知っていること、私との生活を選ぶなら、相手(2人います)と別れて欲しいと冷静に伝えました。
夫は、素直に認めて謝ってくれましたが、すぐには別れられない、3年待って欲しいと言われました。
3年後仕事を辞める予定なので、それまでということなのだと、解釈しています。
私は、信じて待ちますと言ってしまいましたが、今も私に仕事と嘘をついて会いにあったり、コソコソLINEしたりするのを見ると、辛いです。

また夫は、自分の料理を自慢し、私に対し、どうだ参ったか、お前は俺にもっと美味しいものを食べさせろとか、こんなに作ってもらって、お前は楽でいいだろうとか、私を見下す言い方をしてきます。
これらを気にするのは、自分が自分を認めてないからと、学びましたが、夫は自分をしていることを棚に上げてと、怒りが湧いてきます。

せめて不倫を辞めてくれれば、楽になれるのではと思い、もう一度話してみようかとも思いますが、これは夫へのコントロールになってしまうのでしょうか?

カウンセラー
帆南尚美
こんにちは。 ご相談ありがとうございます。
今回クーニャンコさんのご相談を担当させていただきます心理カウンセラーの帆南尚美と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。クーニャンコさんはお子さん二人を立派に育て上げられ、これからご主人とお二人の生活だ、というときにご主人の不倫が見つかったのですね。
何十年ぶりにご主人と二人だけの生活になるというのは、ある意味楽しみでもあり色々な期待もあったでしょうから、とてもショックだったのではないでしょうか。

クーニャンコさんは3年前にご主人の不倫が発覚したとのことですが、そのことをご主人に伝えたのが8ヶ月前なのですね。
その間2年以上もご主人に言わずにおひとりで悩まれていたのは、ずいぶんお辛かったですね。
ご主人のことが嫌いになれないし一人で生きていくのは寂しいからと、ご主人との関係を再構築しようと気持ちが固まるまでも、相当悩み苦しい思いをされたのではないでしょうか。
これだけでも、どれだけクーニャンコさんが我慢強くて、頑張り屋さんであるかが伝わってきます。

ご相談内容を読ませていただきましたが、クーニャンコさんのご主人は、不倫相手が2人いたり、不倫を認めても別れるまで3年待ってくれと言ったり、ずいぶんと奔放といいますか、豪快といいますか、クーニャンコさんの包容力があってこそなのですが、自由な方のように私は思いました。

一方でクーニャンコさんは普段から、ご自身の感情に振り回されることのないよう、物事をいつも冷静に見つめ、状況を整理し、自分なりの答えを出してから、言うべきことと言わないことを整えて、ようやく発言したり行動されることが多いでしょうか?
それは2年以上もの間、ご主人の不倫について問いただすこともしなかったことや、ようやくご主人に、不倫を知っていることや相手と別れてほしいことを伝えたときも「冷静に伝え」たり、ご主人に3年待ってほしいと言われたときも、その理由をご主人に問いただすのではなく、ご主人がお仕事を辞められるまで待ってほしいという意味であろうとご自身で「解釈」された、というところから私には感じられました。

また、パートナーに不倫をされて冷静でいられる人はあまりいませんが、クーニャンコさんは必死に冷静であろうとされたように思います。
つまり「メチャクチャ頭に来た!」とか「悲しい!」とか「悔しい!」とか、「私のことをなんだと思ってんのよ!」などのように怒り狂ったり泣き叫んだりしてもいいのですが、クーニャンコさんはそれをグッと我慢してきたのではないでしょうか。
それは、そういうことをクーニャンコさんが感じなかったのではなく、きっと心の中ではたくさん感じたのではないでしょうか。
でも感じたことをそのまま表現することを、もしかしたらためらうことがよくあるのかもしれません。

そのように感情的にならずに冷静であろうとすることは、今回のご主人の不倫のことに限らず、クーニャンコさんの生き方なのかもしれません。
お仕事をされる時などは、そのようにいつも冷静であろうとすることは大変役に立つことが多いでしょうし、クーニャンコさんもそのやり方で成功されてきたのかもしれません。
それは簡単にできることではありませんので、今までどれだけクーニャンコさんがご自分を律し、あるべき姿に向かって努力されてきたのかを想像すると、頭が下がる思いです。

ところが、パートナーシップというものを考えたときに、感情的にならずに冷静であろうとすることは、実は必ずしも二人の関係性を良くするものではないことがあります。

なぜなら、人と人との繋がりは、多くの場合感情が作っているようなものだと考えられるからです。
「好きだから」一緒にいる、「愛しているから」大切にしようと思う、など、一緒にいていい感情を感じるからこそ、そのパートナーと一緒にいたいと思うものです。
また相手が悲しんでいるからなんとかしてあげたいと思ったり、相手が自分を必要としてくれているなら役に立ちたいと思うことはよくありますので、我々は必ずしも相手にポジティブな感情のみを表現して欲しいと願っているわけではないことも分かります。

ところが、感情を押さえ込み、ポーカーフェイスのように冷静な対応をすると、私たちは心の中でどんなに熱い思いで相手を愛していたとしても、それが相手に伝わらないことが多いようです。
そうすると、相手は「自分は愛されているのか?」とか「必要とされているのか?」ということに自信が持てなくなることがあります。

もちろん感情的になって怒りやら悲しみやらを、ご主人に投げつけることをお勧めしているのではありません。
しかし、せっかくクーニャンコさんがご主人のことを思い、不倫されてもなお嫌いになれないほどの深い愛情を持っていらしても、その温かな気持ちがなかなかご主人に伝わらないと、ご主人も、クーニャンコさんから伝わって来た程度の愛情しか、クーニャンコさんに与えようとしないと考えることができるのです。
好意の返報性といいますが、我々はもらった愛情はお返ししたくなるものですが、もらった以上に返そうとはあまり思わないのかもしれません。

とはいえ、私にはクーニャンコさんのご主人は、クーニャンコさんが感情豊かにご主人を求めてくれることを待っていらっしゃるようにも思えます。
それはクーニャンコさんが書いてくださったお料理のお話です。
ご主人が自分で作った料理について「どうだ参ったか、お前は俺にもっと美味しいものを食べさせろ」とか、「こんなに作ってもらって、お前は楽でいいだろう」などとおっしゃることを、クーニャンコさんはご主人に見下されたように感じたのですね。

確かにそのように受け取ることもできるのですが、そうでないように受け取ることもできます。
つまり、「どうだ参ったか」というのは、「参ったわ〜」と言ってほしい、すなわち「あなたって本当に美味しいものが作れてすごいのね。」などのように、あなたに褒めて欲しいのかもしれません。
「こんなに作ってもらって、お前は楽でいいだろう」というのは、「ほんと楽で嬉しいわ〜。あなたのお料理は美味しくて、こんなに作ってもらって私は幸せだわ!」なんていうことを言ってほしい気持ちの表れであると考えることもできるのです。

少し子どもじみたやり取りのように思われるかもしれませんが、実はこういうことはよくあることで、ご主人のクーニャンコさんへの承認欲求なのではないかと私には思えます。
承認欲求というのは、愛して欲しい気持ちと言い換えることもできるかもしれません。

まとめますと、クーニャンコさんが、よりご自身の感情をご主人に分かりやすく伝え、ご主人のいいところを素直に正直に認め伝えてみようとされるとしたら、お二人の関係はより良く変わっていくのではないかと私は考えます。

しかし、そんなことを言われても、すぐにご自身の感情をうまく出したり伝えたりすることはできませんよね。
なぜなら、クーニャンコさんは、ずっとそうやって感情的にならないことをご自分に課してきたからではないかと私は思うのです。
それはどのようなことがきっかけであったのかは分かりませんが、幼いころなのか、ご自身の有り余る生き生きとした感情を表現したり、心をオープンにすることでうまくいかないことがあり、それらを「やってはいけないこと」と決めたことがあったのかもしれません。

そして感情を表現しないことこそが、生きていくうえで大切なことであり、クーニャンコさんの愛し方なのではないかと私は思うのです。

そのお考えは、きっと今までは色々とためになったのだと思います。
でももしかしたら、今後のご主人との関係を再構築されるにあたっては、そのお考えを少しずつ和らげてあげるといいと考えることもできます。
つまり、クーニャンコさんが隠しているかもしれない、本当の熱い思いや愛情は、外に出してもいいんです。
大好きって言ってもいいし、悔しいって言ってもいいんです。
私だけを愛してって言ってもいいんです。

そういうことを少しずつできるようになっていくと、クーニャンコさんの変化は徐々にご主人に伝わるものですから、お二人の関係性も少しずつ変化していくのではないでしょうか。

最後になりますが、クーニャンコさんの問い「せめて不倫を辞めてくれれば、楽になれるのではと思い、もう一度話してみようかとも思いますが、これは夫へのコントロールになってしまうのでしょうか?」については、上で述べてきました通り、クーニャンコさんの本当の思いをご主人に伝えることをまず第一に考えてくださいね。
コントロールというのは、自分の思い通りに相手を操ろうとすることです。
クーニャンコさんがご主人への思いを伝えることはコントロールにはなり得ないと私は考えます。

クーニャンコさんが、持ち前の人を思いやる気持ちを持ち続け、ご自身の感情を大切に、大事な人とその感情を共有することに興味を持たれることで、ご主人との関係が今まで経験したことのないほど、生き生きと楽しく幸せに満ちたものになりますよう、心から応援させていただきます。

なにかご参考になりましたら幸いです。
お読み下さり、ありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

職場の人間関係、夫婦・家族の問題を主に扱う。 「解決したい問題がある時に、悪いところを探して正そうとするのではなく、自分の魅力や才能を受け取れば物事を全く別の見方で捉えることができ、自分の枠から自由になり、のびのびと楽に毎日を送れるようになる」というスタンスでカウンセリングを行っている。