◇発言することに対するネガティブな思い
こんなことを言ったら馬鹿にされるんじゃないか、間違ったことを言ったら怒られそう、などと思って発言を躊躇してしまうとき、それを恥ずかしがり屋など自分の性格のせいにして、変えることができないと思ってしまうこともあるようです。
自分の言葉に誰かがネガティブな反応をするんじゃないかを思うとしたら、あなたが過去に、あなたが発言したことで馬鹿にされたり、怒られたり、恥ずかしい思いをしたことがあるのかもしれません。
心理学で「投影」と言うのですが、過去に傷ついた経験などがあると、同じような状況においてまた同じことが起きるのではないかという怖れを感じることがあります。
たとえば子どもの頃、歳の離れた兄弟の弟が、お兄ちゃんに意見をするたびに「お前は小さいのだから黙っていろ。」と相手にされず悲しい思いをしたとします。
すると大人になってからも、他人がお兄ちゃんと同じように自分を未熟者扱いし、誰も自分の意見に耳を貸さないだろう、という気がしてしまうことがあります。
もちろんすべての人がそうだということではありません。
投影は、自分が投影していることに気づくだけでも、物事のとらえ方がかわり、発言することに対するネガティブな思いが薄らぐことがあります。
まずは発言するとどのような反応をされると思っているのか、なぜそんなふうに思うようになったのか、リラックスして思いめぐらせてみるといいかもしれません。
◇間違えたら謝ればいい
会議等で何かアイデアを出そうというときに、ブレインストーミングという手法があります。
ブレインストーミングとは、自由な発想でアイデアを出し合うことをいいます。
例えば働きやすい職場にするために何をすればいいかアイデアを出そう、などというときにブレインストーミングをしよう!などと言ったりします。
ブレインストーミングでは、アイデアを出す際のルールがあり、奇抜なアイデアや、一見おかしいとか間違っているように思えるアイデアが出されたとしても、それを指摘したり、それはダメだなどと判断してはいけないことになっています。
正しいも間違いもないので自由に発言してくださいと言うと、多くの人は最初は戸惑いますが、慣れてくると次々とアイデアが出てくることがあります。
つまり、みんな自分の発言することに自信がなくて、指摘や訂正されるくらいであれば黙っておこうと思うからこそ、このブレインストーミングという手法は効果があるのかもしれません。
普段の生活においては、このようなルールは適用できませんので、発言したことに指摘や訂正をされるということはあります。
それはあまり気分の良いことではありませんが、その嫌な気分を引きずらないことが大切です。
そのために、間違えたことを言ってしまったら、すぐに謝って訂正することが大事です。
謝るのは当たり前と思うかもしれませんが、私たちは本当に自分が悪かったと思うと謝ることができないと言われています。
謝ったところで許されないだろうと感じるのです。
ところが、許されないだろうと思って謝らないと、いつまでもそのことが心に引っかかり気分が悪いのです。
この気分の悪さは何かというと、あなたが「なぜあんなことを言ってしまったんだ」と自分を責めているからかもしれません。
誰にも許されないだろうと思うときに、一番あなたを許さないのは、あなた自身なのかもしれません。
謝ればいいなんて都合が良すぎると思う方もいらっしゃるかもしれません。
ところが自分について間違えたら謝ればいいと思えるようになると、他人もまたそう思っている優しく寛大な人に見えますし、何よりもあなたが他人にも寛大な人になっていかれることでしょう。
◇そのひと言に思いやりを込める
発言した後に、あんなことを言わなければ良かったと後悔することがあるかもしれません。
言ったそのときには、どうしても言わねばと思って言ったはずなのに、その後になって、なんだかとても嫌な気分でモヤモヤするのです。
私たちは、愛による発言をすると気分が良く、エゴによる発言をすると気分が悪くなることがあります。
愛による発言とは、たとえば勤めている会社や目の前の相手、そこにはいない第三者、そしてあなた自身に対して、本当にあなたが良かれと思って発言することです。
エゴによる発言とは、相手を陥れようとか、傷つけようとしたり、自分の満足だけのために発言することと言えるかもしれません。
発言するときにそのひと言に思いやりが込められているか、少しだけ気をつけてみて、思いやりを込めた発言であれば、その発言自体を後悔する必要はありません。間違えたら謝ればいいのです。
思いやりを込められなかったときも、次からは思いやりを込めてみようと思うことで、あなたの発言は後悔の対象ではなく、これからあなたがより成長していくための指針になるのではないでしょうか。