どうしたら執着を手放せる?
◆何にしがみついているのだろう?
執着をしている時の心理状態を目に見える形にするとしたら、ちょうどこんな感じです。別れた彼に「どうしてもあなたがいいの!行かないで!」と、彼女が両手でしがみついているような姿です。
執着している時には、心理的な距離が近くなりすぎています。そのため視野が狭くなり、彼しか見えない状態になっています。かりに、彼女の目の前をどんな素敵な人が通ったとしても、彼しか見えていないので気がつくことすらできません。
執着というのは、目の前の彼しか見えていない状態ですから、このときの選択肢は「彼ひとつ」しかなくなっています。彼しか見えていないので他に選びようがないわけです。
このひとつを手放すとゼロになって手元になにも残らなくなってしまう。ゼロはひとりぼっちになるということですから、それが耐え難いときに執着を手放せなくなるのです。
物理的には彼と別れてしまったとしても、執着をしていることで心理的には彼と一緒にいることができます。別れた彼のことを思い出すことはつらいのですが、ひとりぼっちになるよりはましなのでつい考えてしまうのです。
とくに「私を愛してくれる人は彼ぐらいしかいない」というような思いがあるときには、執着を手放しにくくなります。彼を手放すと「誰からも愛されない私」しか残らないような気がするからです。
「誰からも愛されない私」はもともと自分に対してもっている観念であることが多く、そのルーツをたどっていくと「親に愛されなかった私」というところに辿りつくことがあります。
親に愛されなかったという思いがあると、「愛しにくい人を愛することに執着をする」「愛されにくい人からの愛情をもらうことに執着をする」というパターンが恋愛に出ることがあるのです。
◆自分を責めていませんか?
親に愛されたかったという執着心がある分だけ、いま目の前にある関係性への執着となって現れることはとてもよくあります。それぐらいほしくてもらえなかったものがあるという現れでもあるからです。
私たちは心のどこかで「親に愛されなかったのは自分が悪い」と思っています。だからこそ、「自分に悪いところがあるのならば全部なおすから、そばにいてほしい」と自分を責めながらも愛情を求めてしがみついてしまうことがあります。
執着をしているときには、自分を責めながらしがみついています。さきほどの彼にしたら、自分のせいで自分を責めている彼女にしがみつかれるわけですから、罪悪感にしがみつかれるようなものなのです。
彼にしたら、その罪悪感から距離を取りたくなるので、どうしても離れたくなります。つまり自分を責めれば責めるほど、執着心は強まるようにできているのです。
執着を手放せないときには、「自分を責めすぎていないかどうか」をチェックすることがとても大事です。
あまりにも自分を責めすぎていると、彼にしがみついて動けなくなります。語弊をおそれずに言うのであれば、私たちはわざわざ不幸にしがみつくようなところもあるからです。
しがみついておくと、次に進まなくて済みます。次の新しい恋に進んだときにうまくいく保証がないので、いまあるものをつかんでしまう。それぐらい、私たちは変化をすることを怖がっているのです。
◆自分を幸せにする覚悟はありますか?
執着があるときには究極の選択を迫られています。「未知の幸福と慣れ親しんだ不幸のどちらを選ぶのか?」と。シンプルに問いかけるのであれば、「自分を苦しむ生き方を手放して、自分をちゃんと幸せにする覚悟があるのか?」ということになるのでしょう。
誇張をして言うならば、「執着を手放せないということは幸せになりたくないと思っているのと同じだ」ということです。ですので、冒頭部分に書いたのです。ときには別れを選ぶことが幸せになることもありますよと。
幸せになる方法は他にもあるのかもしれない。それが選択肢を増やすことであり、執着を手放すことの目的でもあるのです。
恋愛であれ、仕事であれ、生き方であれ、考え方であれ、私たちはいろいろなものに執着をします。それがうまくいっているときは良いのです。かつてはうまくいっていたからこそ執着するのです。
状況や環境や時代が変わったことによりうまくいかなくなったときに、他の考え方、他のやり方、他の生き方はないのかな?と視野を広げることを「手放し」というのです。
執着を手放すことの目的は幸せになること。視野さえ広がれば「幸せになる方法はいくらでもある」と思えるようになることをどうか忘れないでください。
(完)