どのような感情を感じながら、その言葉を発するかが大切
こんばんは。
神戸メンタルサービスの平です。
きょうは、感情の力学について、お話していきましょう。
私たち人間は、いつもいろいろな感情を感じながら生きているわけですが、どんな感情を感じながら言葉を発するかによって、相手が受け取るイメージがまったく違ってきます。
たとえば、若いころ、暴走族に入っていた経験がある人がいたとします。
その人がこの経験について話すとき、ただ事実として、「俺、昔、暴走族に入っていたことがあるんだ」と言うと、ほとんどの人は、「へー、そうなの」と事実関係のみを認知する反応を示します。
ところが、同じことを、強い罪悪感を感じながら言ったとしたら、どうなるでしょう?
「いや‥‥、だれにも話せないことがあってね。俺の人生の中でも、すごく‥‥、恥ずべきことなんだけど‥‥、じつは、俺、暴走族に入っていたことがあるんだ」。
こんなふうに、本人が自分を責めながら話すと、人もなぜかその人を責めたくなるものです。
「えー! そんな人だとは思わなかった。びっくりよね!」などのように、です。
これは、恋愛に関する会話もそうです。
たとえば、あなたがつきあったボーイフレンドの数が意外と多くて、そこに罪悪感を感じているとします。
その罪悪感をもったまま、いまの彼にそのことを伝えると、彼から攻撃されやすくなってしまいます。
「みんなと比べて、ほんの少し‥‥、というか、だいぶ多いかもしれないけど‥‥、いままでに10人はつきあったと思う」。
こんなふうに、人と比べてみたり、「だいぶ多い」などと、あなたの主観を入れて話したりすると、相手はそこに反応するのです。
逆に、「私はけっこうモテてきたから、つきあった人は10人ほどかな」などと言ってみると、あなたの主観である「モテてきた」が相手に強く伝わり、「そうか、昔からモテる娘なんだなー」という印象が主に残ります。
男性にお願いごとをするときも同じです。
「あのね、イヤだったら断ってくれてもいいんだけど‥‥」とか、「ほんとに申し訳ないんだけど‥‥」などと罪悪感を感じながら頼むと、相手もそれに反応して「なんだよー」となってしまいます。
そうではなくて、「やさしいあなたにちょっとお願いがあって‥‥」とか、「こんなこと、あなたにしか頼めないんだけど‥‥」といった言葉を使うと、相手もあなたのお願いをものすごく聞き入れやすくなったりするのです。
人に気をつかうのは、もちろん悪いことではありません。
しかし、恋愛においては、しばしばそれが親密感をこわしてしまうことがあるのです。
人に気をつかうということを感情レベルで見てみると、深層心理に「ちゃんと見てあげていないと、この人は不機嫌になる」とか「気をつかわないと、怒られるかもしれない」というものがあるといえます。
それは言い換えれば、相手を難しい人、よくない人として扱っているということでもあるわけです。
その点、そこに親密感があれば、「多少のことは大目に見てくれるよね。だって、やさしいもんね」とか「怒ったりすることはめったにないよね。ふところが大きいもんね」などと、あなたも好意にあふれる目で相手を見ていくことができます。
つまり、気をつかう関係よりも、気をつかわない関係のほうが、恋愛関係はうまくいきます。
お友だちとの関係もそうですよね。親密な相手なら、掃除をサボッていたとしても、「きょうはちょっと汚いよ」と言うだけで、相手を部屋に入れたりできるでしょう?
心理学で、「親密感はすべてを癒す」という表現をすることがあるように、相手のことを、「愛あふれる寛大な人だ」とあなたが見続けることができれば、すべては許されるのかもしれません。
ちなみに、仕事で失敗したときによく使うテクニックにこういうものがあります。
「いやぁ、担当があなたでほんとうによかったです。これがほかの人なら、シャレにならない状況でした。ほんとうに救われました、あなたが担当で!」。
こんなふうに言われたら、なかなか相手も怒れないですよね。
「どのような感情を感じながら、その言葉を発するか」。
同じことをコミュニケーションをするのだとしても、そこがとても大事というわけです。
では、来週の恋愛心理学もお楽しみに!!