無価値感はどこからやってきたのか?
■ルーツは「もっと愛されたかった」という思い
私たちが恋愛の中で陥りがちな罠の一つに、「過去の親子関係や恋人にもらえなかった(と感じている)愛情を、無意識のうちに今のパートナーから取り戻そうと躍起になってしまう」ことがあげられます。
たとえば、
「子供の頃お父さんに褒めてもらえなかった」
「お母さんに話を聴いてもらえなかった」
「過去のパートナーは向き合おうとしてくれなくて、寂しかった思い出ばかり」
などのように、欲しかった愛情をもらえなくて「私は愛されてないの?」という気持ちから、両親や過去のパートナーへの怒りや不平不満を抱えてしまう人は少なくありません。
ただ、こうした感情はまともに感じるにはつらすぎるので、多くは心の奥深くに抑圧されるためにふだんは自覚できないものです。
ところが誰かと恋愛が始まると、遥か昔に諦めたり、傷ついたり、怒りや不平不満のルーツになった「もっと愛されたかった」という欲求が、徐々に心の表面に浮上してきます。
たとえば、彼が寝ている時間に電話して何時間も話し込んだり、疲れていると言っている彼を無理やり外食に連れだしたり、相手の事情よりも自分の欲求を優先したくなるのです。
いま目の前にいるパートナーに、両親や過去のパートナー、つまり「この人から愛されたかった」と感じていた相手の姿を重ねてしまい、
「あなたはあの人たちと違って、私が欲しい愛をちゃんとくれるよね」と、ついワガママになりすぎたり、求めすぎてしまうことで、恋愛がうまくいかないパターンになってしまうわけです。
■無価値感を分かってほしかったから
恋愛が始まったばかりのロマンスの時期であれば、パートナーはあなたの要求を叶えようと頑張ってくれるでしょう。
しかし、あなたが過去に体験した「愛情をもらえなかった」という悲しみ、不安、怒りが心の奥に残っている分だけ、満足感や感謝の気持ちよりも、
「あんたが足りないのよ!私のことをちゃんと愛しなさいよ!」と不足感や不満の方をパートナーにぶつけてしまいたくなります。
そうなると、パートナーの方は徐々に「どうして満足してくれないの?」「僕の愛情が十分でないの?」と自信を失っていきます。
「君のワガママには付き合っていられない」と怒る人もいるかもしれませんし、「僕の愛では君を満足させられない」と諦めて距離をとろうとする人もいるかもしれません。
「友だちに戻ろう」
「君にはもっとふさわしい人がいるよ」
などの言葉がパートナーから出てくるとき、その裏にはこうした気持ちが隠れていることが多いようです。
なぜ嫌われるほどワガママになったり、求め過ぎてしまうのか?を心理的にみていくと…
「私は愛されなかった」という無価値感の苦しみ、その感情を分かってもらおうと、パートナーに無価値感を感じさせるような言動を無意識的にとってしまうからなのです。
「私はこんなにつらくて苦しかったの!それを分かってほしいの!」という思いから、要求をぶつけてしまうんですね。
とはいえパートナーにしてみれば、まるで身に覚えのない借金の返済を迫られているように感じてしまいます。
最初は頑張れても、あまり感謝されなかったり、与えても与えても際限なく求められたりすれば、落胆や疲れの方が上回ってしまうでしょう。
■誰に愛されたかったのだろう?
パートナーを父親や母親のように扱ってしまい、昔もらえなかった愛情を取り戻そうとするのは、誰もが一度はやってしまうことです。
こんなイメージをしてみてください。
もし、あなたが今までもらってきた愛情を積み重ねてメーターのように目盛りを付けられるとしたら、「私は愛されなかった」と感じている分はマイナスに針が振れているはずですよね。
そんな時「もらえなかった分を、目の前のパートナーから取り戻してマイナスをプラスに変えたい」と思ったとしても、それは無理もないことかもしれません。取り戻せたら心の中でバランスがとれる気がしますからね。
しかし、やり過ぎてしまったり、怒りや恨みを抱えたまま関わってしまうと、パートナーとの関係が親子関係の再現になって、かつて感じていた無価値感が戻ってきて苦しくなってしまいます。
無価値感は心の深い場所にあるだけに、恋愛の問題と結びつけにくいですし、ましてや過去の人間関係が影響しているとは考えつかないかもしれません。
ですが、このテーマを癒したいと思ったら、両親との関係、特に異性の親との関係性について見つめ直してる。あるいは過去のパートナーと同じようなパターンが繰り返されていなかったかを振り返ってみましょう。
たとえば「お父さんから欲しかったものが、彼に求めてるものと同じだった」などのように、現在のパートナーへの感情との共通点が見えてくるかもしれません。
今の問題がどこから生じているかが分かれば、次の「どうすればいいか?」へのステップが見えてきますからね。
みなさんの恋愛にお役立ていただければ幸いです。