生まれながらにして価値がある視点を持ちながら、価値がないと誤解した過去を振り返ってみる
今回の記事では、もう少し踏み込んで「自分と向き合う」ことについて考えていきたいと思います。
私が考える「自分に向き合う」とは、真実の自分に出会うこと。
それは、自分の価値と出会う、つまり、もともと価値があったことに気づくこと、だと思っています。
過去の辛い体験を思い出すことや、欠点・劣等感などの自分の嫌な部分と向き合うということではない。私はそう考えています。
これらは今の問題はもちろん、あらゆる場面で自分を責める材料になっているのですが、そのもとになっているのは「自分には愛される価値がない」という誤解。
この誤解は、自分の価値から目を逸らすことに使われます。
せっかく価値があるのに、そんないいものあるはずがない、となかったことにしてしまうのですね。
自分と向き合う時には、確かに過去の自分の体験を思い出したり、感じたりするという側面もあるでしょう。
しかし、それは辛い過去を思い出して苦しむためではなく、あくまで誤解を解くため、昔も今も価値ある自分、愛される自分であることに気づくためです。
◇どこで自分の価値を誤解をしてしまったのかを見ていく
苦しむためにやるのではなく、自分の価値と出会うためにやる。
自分と向き合う時には、このことをきちんとふまえた上で、やっていくことがとても大切です。
誤解のルーツは生い立ちにある場合が多いのですが、苦労している度合いだけ自分の価値が感じられなくなってしまいます。
例えば、こんな事例を考えてみましょう。
両親が共働きで、幼い時から家に帰ってきても一人で留守番をしなければいけない状況だった。
ひとりぼっちでとても寂しい、悲しい思いをしていると、子ども心にその理由を懸命に探そうとしたりします。
子どもは大人と違って知識も知っている世界も小さいし、親のことが大好きですから、その理由を「自分がいい子じゃないから両親はいつも家にいないんだ」と自分の中に求めてしまうことがあります。
実際には、それは両親が忙しかったので一緒にいられる時間が短かった、という大人の事情なのですが、大人目線で見たらわかることも、子ども目線では気づけないことも多いのですね。
すると、そんな状況の時には、子どもは自分がいい子になれば一緒にいられるのではないか、と思って、がんばっていい子になろうとしたりします。
いい子でいたら、親も助かるので、そのことで褒めてもらうこともあるのですが、どれだけがんばっても両親が帰ってくるのは夜で、状況が変わるわけではありません。
この体験が「自分がどれだけがんばっていい子をやっても変わらない」だったり「やっぱり自分は生まれつき価値がないんだ」というような思いを持ってしまったりするのですね。
この思いを大人になってからもずっと持ち続けることになり、問題が起こったりした時に「やっぱり自分が悪いんだ」と思い込みやすくなってしまう場合も多いのです。
◇「生まれながらにして価値があるとしたら?」という視点で過去を整理する
しかしながら、大人になって客観的に見てみれば、子どもが悪いはずはなく大人の事情であることがわかるし、詳しく状況を見ていけば、両親が子どもに愛情を持っていないどころか、大きな愛情があって一人にさせていたことを申し訳ないと感じていた、なんてこともわかってきます。
しかし、自分自身のことは客観的に見られないし、長年持ち続けた自分には価値がないという思いは強固なので、誤解であるところに辿り着くのが大変なのです。
カウンセリングでは、こうした誤解を解くお手伝いをさせていただいているのですが、ポイントは過去の苦しみを感じるのではなくて、「生まれながらにして価値があるとしたら?」という視点で過去を整理することなんですね。
この視点を持つことが、過去を整理しやすくする、つまり自分に向き合うことをやりやすくしてくれます。
私が「自分に向き合う」とは、真実の自分に出会うこと。
それは、自分の価値と出会う、つまり、もともと価値があったことに気づくこと、と考えているのはこうした理由からなのです。
次回は自分と向き合うための具体的な方法についてお届けします
(続)
- 問題解決の視点の一つが「自分と向き合う」ことと考えてみる
- 「問題の原因・理由はどちらにもある」からはじめてみる
- 「自分に向き合う」とは「自分の価値に気づく」こと
- 自分と向き合うための最初の具体的なアプローチ