抑圧した感情は外からやってくるとは?
◆最近、イライラした人ばかりが目につくのはなぜ?
投影は「自分の考えていることや感じていることを外側の世界に映し出して見ている」という考え方です。たとえばこのような感じです。
『私が青空を見ている。空を見てなんだか悲しそうな色だなと思った。』
これは「空を見て悲しいと思ったのではなく、悲しいという感情が心のなかにあって、それを映し出したから悲しい色に見えたのだ」ということになります。
ここで重要な点は、空を見て悲しくなったのではなく、もともと心のなかに悲しみがあったから、悲しみ色の空に見えたのだということ。つまりは、感情が先にあり、外側の現象が後にあるということです。
さらに話を付け加えるのならば、私たちの顕在意識は5%ぐらいで無意識が95%ぐらいだといわれています。(これは諸説あります。)
顕在意識は自分でもわかっている意識のことで、無意識は自分でもよくわかっていない意識のことをいいます。私たちは自分のことをわかっているようで、たったの5%しかわかっていないということになるのです。
投影は自分でも気がついていない心の部分をとてもよく映し出します。「自分でも気がついていない」というところが大きなポイントです。気がついていないということは、あたかも「自分がその思いをもっていない」と信じているような状態なのです。
だからこそ、自分でも気がついていない思いが投影されたときには、あたかも「相手がその思いをもっているのだ」と思い込みやすくなるのです。たとえば、このような感じです。
「ちょっと聞いてくださいよ!最近、なんだか当たられやすいんですよね。昨日も自分がしたミスじゃないのにとばっちりで怒られたんですよ。まったく嫌になるなぁ。最近、そんなことばっかりなんですよ!!」
こんなふうに自分のまわりに怒っている人ばかりが集まってくることがあります。そんなときカウンセラーはこんな見方をすることがあります。
「もしかしたら最近、感情を溜め込んでいませんか?とくに怒りの感情を抑えているとか。心理学では抑圧した感情は外側からやってくると考えるのですが、思い当たることはありますか?」
なぜならば、怒りを抑圧していると「あなた、怒っていますよ!」ということを自分に知らせるために、「怒っている人」「キレている人」「怒りを誘発するような出来事」が身の回りに起きやすくなるからです。
あなたのまわりにイライラしている人が多いのであれば、それはあなたの抑圧している怒りを知らせるために、わざわざ登場してくれているのかもしれません。ということは、あなたのまわりにいる人は、あなたに対するメッセンジャーと考えることもできるのです。
◆私はいったい何に怒っているのだろう?
感情は感じたら解放されるという法則があります。しかし、抑圧していると感じることすらできないので、心の奥底に蓄積されていきます。蓄積された怒りがどうなるかというと、怒っている人や怒りを誘発するような出来事に映し出されるわけです。
これがまさに無意識が映し出された状態で、自分の心の状態が外側の世界に映しだされています。それを自分で見たときに「あれ?もしかして私、イライラしているのかな?」と気がつけると、無意識を意識上にあげることができます。意識上にあがるとようやく自分の心と繋がることができます。「ああ、私、怒っていたんだわ」と。
自分の心と繋がると感情の解放が起こります。誰かに映し出していた感情が自分のもとに戻ってくるので、自分の感情として感じることができるからです。これを「投影を取り戻す」といいます。
投影の法則を知っておくと、無意識を意識上に上げやすくなるというメリットがあります。自分でも気がつかないような、自分でも認めたくないようものも映し出されるからです。
本当は恋をしたいのにその気持ちに蓋をしているとき、恋をしたい気持ちが投影されて、街を歩くとカップルばかりが目につくかもしれません。
本当は女性らしい洋服を着てみたいけれども、自分には似合わないからと手に取らないとき、セクシーな女性ばかりが目につくかもしれません。
だとしたら「最近、自分は何を見ているのかな?」と考えてみると良いかもしれません。そこにあなたの望んでいるものが映し出されているかもしれませんから。
あなたが見ている世界を観察してみましょう。そこで見ていること、そこで感じていること、そこで思うことが、あなたの心の状態を教えてくれているのです。
学べば学ぶほど深い投影の法則の世界。またいずれご招待したいと思います。
(完)