2つの動機づけを理解して「やる気」につなげよう
「やる気が出ない」と思っていませんか?
「やる気さえあれば、できるのに」と、もどかしく思うこともあるかもしれません。
今回は、やる気が出ない時の心理と、やる気の出し方のヒントをお伝えします。
●やる気が出ない理由のひとつ「自己否定」
やる気が出ない心理的な理由はいくつかありますが、カウンセリングでよくお聞きする理由として自己否定があります。
「他の人はできているのに、なぜ私はできないんだろう」「思うようにがんばれていないなぁ」など、自分を責めたり、否定したりする気持ちはありませんか? もしかしたら、やる気はないわけではないけれど、そのやる気が自己否定で打ち消されているのかもしれません。
車に例えると、やる気のアクセルを踏みながら、自己否定のブレーキを同時に踏んでいるようなものです。ご本人がフル回転しているけれど、前には進めないといった状況です。その状況では、とても疲れてしまうでしょう。
この状況では、自己否定を減らしていくことが有効です。まずは、ただ、今の自分の状態を認めてみましょう。疲れているのかもしれないし、がんばりたいのかもしれません。その状態で「何かしよう」と思っている自分のことを「がんばっているよね」と肯定してみましょう。
自分を認めると、自己否定に使っていたエネルギー(労力)を、行動するためのエネルギーに使いやすくなるでしょう。
●2種類の動機づけ
行動するための意欲を持つ動機づけとして、内発的動機づけと外発的動機づけの2種類があります。
内発的動機づけは、自分の内面にある心理的な欲求にかられて行動する意欲を持つことです。「興味があるから」「楽しいから」「好きだから」などの自発的な理由で、行動そのものに喜びや満足を感じて取り組もうとするものです。
内発的動機づけは、「自分がしたいからする」ので幸福感や満足感を得やすいです。また、「したいからする」行動は、持続させやすい特徴があります。さらには、自分で問題解決をしようとするなど、自己成長にもつながっていきます。
外発的動機づけは、行動する意欲が外部からの評価・報酬・賞罰などに影響されるものです。例えば、「お金を稼ぐために働く」「叱られないために勉強する」など、行動の目的が外から与えられる要因に影響されます。
例えば、「ご褒美がもらえるから」「報酬が得られるから」と快刺激が得られるからがんばるとか、「罰があるのが嫌だから」「嫌なことを避けたいから」と不快刺激を避けるためにがんばるとかが外発的動機づけになります。
全くやる気のないものに取り組むのには、外発的動機づけがきっかけになることがあります。
例えば、「テストで100点取ったらお小遣いがもらえる」という外発的動機づけがあって、「お小遣いが欲しい」から勉強をがんばったとします。その結果、勉強がわかるようになって楽しくなったり、「いい点数が取れる」と自信になったりしたとしましょう。
そうすると、きっかけは「お小遣いがほしい」という外発的な動機づけだったのですが、勉強してみると楽しい、「できた」と感じるのは嬉しい、だから自分から「勉強しよう」と内発的な動機づけに変化してくることもあります。
内発的動機づけと外発的動機づけの2種類の動機づけは、対立するものではありません。「自分で決めている」という自己決定の度合いが高くなるほど、内発的動機づけが濃くなっていくものです。
●「したいからしている」を取り戻す
「やらなければならない」と自分が作ったルールが多い場合も、やる気を失いやすくなります。例えば、「人に合わせなければいけない」「笑顔でいなければいけない」「我慢しなければならない」など。
たとえ自分が作ったルールだったとしても、「しなければならない」と思うと、人から「やらされている」のと同じように窮屈さを感じるでしょう。「したいからする」という自由さがないので、内発的動機づけになりにくいわけです。
自分ルールでの「しなければならない」は、それが本当に必要かを再確認しましょう。かつては必要だったとしても、今は不要になったルールは手放していきましょう。
また、「しなければならない」に対して、「してもいい」し「しなくてもいい」と選択肢を作り、「今回はする」「今日はしない」と選んでみましょう。自分で選んでみると、やる気が生まれやすくなります。
それから、「なぜそれをするのか?」という理由を追求していくと、「したいから」に出会うことも多いです。
仮に、人に合わせるのは「みんなと仲良くしたい」から、笑顔でいるのは「人を和ませたい」からだったとしたら。「したいから」していることだと気づいたら、やる気も湧きやすくなるのではないでしょうか。同時に、それを「したい」と思えている自分のことを、ちょっぴり誇らしく思えるのではないでしょうか。
皆様がやる気を取り戻すヒントになればと思います。
(完)