おかあさんがつくったような家を私もつくりたい
こんばんは
神戸メンタルサービスの平です。
「久しぶりに実家に帰ってみようかな‥‥」なんて考えるときはないでしょうか?
なにがあるわけでもないのだけれど、「早く家に帰ろうっと」と考えることはないでしょうか?
ご相談におみえになった彼女の母親は、これというとりえのある人ではありませんでした。
一方、父親は一流大学を卒業し、現在はそれなりの上場企業の役員をしていて、人柄的にも尊敬できる人です。
母親はもともと父親と同じ会社に勤めていましたが、学歴は高卒。地方の高校を出て、東京で仕事をするようになりました。
結婚後はすぐに専業主婦となり、おにいさんと彼女の2人を生み、その後もずっと主婦として過ごしています。
そんな母親を見て育ってきた彼女は、「地味で、なにもできず、家にずっといるだけ。おかあさんみたいな人生はイヤだ」とずっと思って生きてきました。
そういえば、昔、父親からこんな話を聞いたことがあります。
「おまえたちが幼いとき、海外転勤の話があったんだよ。でも、おかあさんがいやがったから、行かなかったんだ」。
そのとき、彼女は「おかあさんが賛成していたら、私も夢の海外暮らしができたかもしれないのに‥‥」と思い、思わず母親をなじってしまったのでした。
そんな彼女も大学を出て、社会人になりましたが、なかなか忙しく、残業も多い事業部に配属され、いつもクタクタに疲れていました。
すると、これという理由はないのに、いつもこう思うようになったのです。
「早く家に帰りたい」
で、彼女は考えたのです。
「なぜ、私は家に帰りたいんだろう?」
考えてみれば、どうやらそこには、いままでの彼女はまったく評価していなかったものがあったようなのです。
それは、温かなごはん、居心地のよさや安心感‥‥。
家は、彼女が心からリラックスできる空間だったわけです。
彼女が家に帰ると、母親は「おかえり」の笑顔とともに、麦茶を出して迎えてくれます。
その麦茶を飲みながら、彼女はいつも、「あぁ?、疲れた??!」とソファにごろんと寝転がります。
「せめてパジャマに着替えなさいよ」と優しく諭す母親。
「いいのー。おかあさんは専業主婦だから、わからないのよ。OLがどのぐらいたいへんなのか」
「そうね、おつかれさま」
母親は娘の言動に腹も立てず、そう言ってくれます。で、すぐにテレビのリモコンを渡してくれたり、「プリンがあるわよ」とすすめてくれたりするわけです。
「ええー! いま、ダイエット中だから、そんなこと言わないでよ!」
「あら、きょうのプリンはおいしかったわよ」
「もう、おかあさんのせいだからね、ダイエットに失敗したら」
えらそうにそう言いながら彼女はプリンを食べます。
そんな他愛のない会話もひっくるめて、うちの空間のすべてがすばらしく居心地がよかったんだ‥‥、そう彼女には思えるようになってきたわけです。
あるとき、彼女は父親に聞いてみました。
「おとうさんも、家に早く帰りたいって思ったことはある?」
「ずっとそう思って生きてきたよ。おまえたちやかあさんがいる家はとにかく居心地がいいからな。
だから、外国に転勤する話が出たときも、わが家のこの環境が壊れるリスクを思うと、行きたいとはぜんぜん思わなかったんだ。
だってさ、わが家はかあさんあってのものだからね」
居心地のよさ。
あまりにも当たり前に身のまわりにあったものなので、彼女は考えたこともありませんでした。
でも、いまはすっかり、こう思うようになっています。「おかあさんがつくったような家を私もつくりたい」、と。
では、来週の恋愛心理学もお楽しみに!!