実は愛されていることに気づくこと
こんばんは
神戸メンタルサービスの平です。
カウンセリングの現場では、ご両親が離婚し、母親に育てられ、長年、父親とは会っていないという人によくお会いします。
こうした家庭の場合、おかあさんが男性顔負けに働いておられることが少なくありません。
もちろん、生活や育児のために必要なことなのですが、子どもにしてみると、父親がいなくなり、おかあさんがお父さんのようになってしまい、まるで父も母も失くしてしまったように感じてしまうということがあるようです。
さらに、この子どもの世話を祖父母がしていて、おばあちゃんがおかあさん代わりになっているということもよくあります。
そのおばあちゃんあたりが、「おとうさんがいないせいで、おまえには辛抱ばかりさせているね」などと言うことで、子どもの心の中で父親を恨むような気持ちが強まっていくこともあるわけです。
父親を恨んでいると、その感情は父親のイメージに投影されます。
父親から、「おまえなど、生きようが死のうがわしは知らん」と言われているというようなイメージがつくられ、そのイメージはどんどん悪くなっていきます。
さらに、それが強まると、「世の中の男性は私に興味がない。それどころか、私なんかいないほうがいいと思ってる」などと、イメージが男性全般にまで広がり、ネガティブに考え込んでしまう人もいるのです。
こうした人々に出会ったとき、私はよくこんな提案をします。
「じゃあ、ほんとうにそうなのかどうか、おとうさんに会って確かめてみましょうよ」
たいていのみなさんはこう答えられます。
「え、父親には長く会っていないし、そもそも、いまどこにいるかもわかりません」
しかし、日本のような戸籍社会では、肉親がいまどこに住んでいるのかを見つけるのはとても簡単です。
もちろん、テレビのご対面番組などに依頼する必要もありません。
あなた自身の戸籍謄本を取ると、父親の欄には×が付き、父親は除籍されています。その除籍された父親の戸籍を取ってみると、日本国内であれば、現住所は簡単にわかるのです。
こうして、私のクライアントのみなさんも、子どものころに別れた父親や母親に会ったりしているわけです。
さて、少し前にカウンセリングにきてくれた彼女もこの方法で父親と会い、そして、大きな失望を味わいました。
再会した父親は、あまり豊かな生活をしているようには見えませんでした。ガリガリに痩せ、髪は抜け、みすぼらしい見た目の人だったのです。
「この人が私のおとうさんだったなんて‥‥。会うんじゃなかったな‥‥」と彼女は思いました。
会話は続かず、彼女の失望した態度を感じとったかのように、父親はものすごく気を使っていました。で、多くの話をしないまま、1時間程度で別れたのです。
その後、彼女の携帯電話に何度か着信があったのですが、彼女は出ず、留守番電話も入っていなかったので、長らくそのままになっていました。
そして、8年後、彼女の電話に知らない携帯番号から何度も電話がかかってきたのです。
仕方なく取ってみると、電話の主はおとうさんの知り合いという人で、それは、おとうさんが亡くなったという知らせなのでした。
で、その人から「あなたに渡したいものがある」と言われ、後日、会うことになったのです。
受け取ったものは、お金の入った布の袋でした。束ねた五千円札と千円札がぎっしりと入っていて、合計で50万円ぐらいあったそうです。
その知り合いの人によれば、彼女に会って以来、父親は見違えるように元気になり、「娘のためにできるだけのことをしたい」とがんばって働くようになったそうです。
そして、「まとまった金額のお金が貯まったら、娘に手渡したい」と思っていたようなのですが、突然、脳いっ血で倒れ、その思いが叶わなかったのです。
「こんな私が、おとうさんの生き甲斐だった‥‥」
彼女はそう考えてびっくりするとともに、この経験から貴重な教えを得ました。
「私を愛してくれていた人の愛に、私は気づいていないことが多かったかもしれない」と思うきっかけとなったのです。
では、来週の恋愛心理学もお楽しみに!!