許したいけど許せないというご相談を頂きました。カウンセリングをさせて頂いていても「許し」というのはクライアントの方達にとって最も克服するのが困難な問題のひとつだなと痛感することがあります。
恨んでいる人を許すのはとても難しいですし「許すこと」に抵抗を感じる方はとても多いのです。許すことで何か変化があるのかと疑問をもたれる方もいらっしゃるでしょう。
許しを進める上で大切なことは動機付けや理由です。何のために許すのか、誰のために許すのか、それらをはっきりと認識していないと許すというプロセスがただの苦痛になってしまいます。
今回の心理学講座ではその動機付けや理由の重要さについて解説し、許しのプロセスについても説明させて頂きます。
◎リクエストを頂きました◎
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許せません。
許せない事が色々あります。これは駄目な事ですよね。
どうすれば許せない人を許せますか?
また、誰でも許せない人はいますか?
(一部、頂いた内容を編集させて頂きました)
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許せない自分を認める
リクエストありがとうございます。ご相談者の方の切実な思いが伝わってきました。
カウンセリングの場では様々なご相談を受けますが、その中でも「許すこと」はクライアントの方達にとって最も克服するのが困難な問題のひとつだなと痛感することが多々あります。
「恨んでいるのに許す」って難しいですよね(><)
その点でいうとご相談者の方は「許せない人がいること」を認めています。まずはそのことを評価してあげてくださいね。
「何で?許せない人がいるなんて良くないよ」
「人を恨んじゃいけないとカウンセラーさんからも教わったよ」という方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん、できることなら相手を恨まず許せたらいいでしょう。穏やかな気持ちでいられるのならそれに越したことはありません。
でも、誰かを憎んだり、恨んでしまうことだってあると思うのです。
ご相談者の方はそのことをきちんと認めている。それが潔いしそのように素直な気持ちを感じることで、私達は「変わらなきゃ、次に進もう」と思えるのです。
みなさんの周りにこういう方っていませんか?
相手の方が最近プリプリしている。機嫌が悪いなと感じるので「大丈夫ですか?何かあったの?」「何か怒っているの?」と訊くと「何でもないよ。怒ってなんかいないよ」と言いながら、めちゃくちゃ怒り口調の人。
その様に本当に怒っている人ほど、その気持ちを感じないようにし、否定するのです。
その点、ご相談者の方はご自身の今の状況、気持ちを素直に感じることができていますし、その段階ではその「感じていることを認めること」がとても大切なのです。
言ってみれば、許せない自分を許すことが最初のポイントなのです。
何のために許すのか
カウンセリングの現場で「許し」を扱っていくと稀にこのように仰る方がいます。
「許すなんて損なだけじゃないですか。ひどい目に遭った私がなぜ、相手を許さなきゃいけないのですか。」…と
確かにそうです。今まで散々辛酸をなめてきたのになぜ、私が許さなきゃいけないのと思うのも当然でしょう。
でも、ここでみなさんに考えてほしいのです。
誰のために許すのでしょう?
あなたを傷つけたあなたが恨んでいる相手のためなのでしょうか?
それとも、あなたの話を丁寧に聴いてくれる友人やカウンセラーのためなのでしょうか?
いいえ、違います。誰のために許すのか?
それはあなたのためです。
あなたのために許すのです。
あなた自身が幸せになるために相手を許すんですよ。
その動機を勘違いしてしまうと、許すことが犠牲的でただの苦痛の始まりになってしまうでしょう。
例えば、あなたが怒り、恨みをいつも感じていたとしましょう。
駄洒落じゃないですが、その怒りを船の錨(いかり)に例えてみます。
もしも、あなたがどこに行くにも怒り・恨みの感情を引きずっていたとしたら、それはあの船の錨を引きずって歩いているようなものなんです。
すると、当たり前ですがたくさん障害が起きますよね。まずは重くて歩きづらい。重いから肩が凝る。身軽に動けない。いつも何かに縛られているように感じる等々...
要するにあなたは自由になれないんです。
怒りと言う重しを背負っている分だけ、いつも体も心も重たいし、何かに縛られているように感じてしまう。
そのような状態が「誰かを恨んでいる状態」と言えるでしょう。
それなら、その錨(怒り)を降ろしてみませんか?
あなたを不自由にするその錨を降ろしてしまえばあなたは今よりも更に自由になれるのです。
許すことであなたがラクになれるんです。幸せになれるのです。
だから、「自分のために誰かを許そう」というのが正常なモチベーションの保ち方だと私は感じています。
考えてみてください。
普段から数キロの錨(怒り)を背負っているとしたら、それだけであなたの行動は限られてしまうでしょう。
駅まで徒歩10分の道のりを、その怒りを持っていることであなたに重くのしかかり、2倍3倍とかかってしまうのではないでしょうか。
恨みや怒りはそれだけあなたに負担をかけていると言っても過言ではないでしょう。
その重しをいつまでも引きずっていたいですか?
許すために
・許そうという意欲を認める
まずは、自分には許そうという思いがあることを認めてあげてくださいね。
誰かを許そうと思ってもなかなかできないときもありますよね。そんな時、決してご自身を責めずに「私は誰かを許そうとしているんだ」
その意欲を評価してあげてくださいね。
あなたは嫌なことをされた。それでもその相手を許そうとしているとても優しい人なんだということを忘れないでほしいんです。
・自分を許す
先ほども書いたようにあなたがラクになるために相手を許すのです。
でも、もしかしたらあなたの心のどこかで「私なんかがラクになっちゃいけない、幸せになってはいけない」という思いが眠っていることがあるのです。
あなた自身が幸せになってもいいと許してあげましょう。
・今を生きる
怒りや恨みを起こす原因と言うのは大抵、過去の記憶の中にあります。
「中学生のとき、いじめられた」
「新入社員のとき、先輩にいびられた」
その当時のことを思い出すと胸が張り裂けるような思いになるかもしれません。
でも、少しずつでもいいので過去に捉われるのではなく、今を大切に生きようという意欲をもってほしいのです。
過去に辛いことがあっても、誰かを許そうとしている今のあなたが経験することは過去とは違うものになるでしょう。
きっと素晴らしい経験や人間関係を築けると思うのです。
そのためにもあなた自身のために誰かを許してあげてくださいね。
(完)