ストレス思考を変える3つの方法
私たちは日常的になんらかのストレス環境に生きています。
世の中には様々な人がいて、その人たちやその人たちが作り出す社会と接しながら生きているので、ある意味仕方がないことかもしれません。
一方、ストレスを感じる原因や感じ方は人それぞれです。
同じ環境にいても、ある出来事に対して非常に強いストレスを感じる人もいれば、その出来事には全くストレスを感じないけれども、別の出来事に関しては強いストレスを感じる人もいます。
例えば、高所恐怖症の人は高い場所に行くと強いストレスを感じますが、高い場所でも平気な人がいます。梅干しが嫌いでそれが目の前にあるだけでストレスを感じる人もいれば、梅干しが大好きという人もいます。
これらの差は、ストレスが出来事や環境にのみ由来しているのではなく、その人の感じ方や捉え方が影響していることを示唆しています。
すなわち、個人の内側にある何らかの要因が、その人がストレスと捉える状況と作用してストレスを感じるということになります。
では、個人によりストレスを感じる差は一体どこから来ているのでしょうか。
私たちはオギャーと生まれてから親などによる生育環境の影響を受けます。親から言葉を習い、振る舞い方を習い、考え方の基本や行動の基本を学びます。
私たち人間は他の動物と異なり、その時々の生育環境に適応するためにその脳は白紙に近い状態で生まれてきます。コンピューターにWindowsなどのオペレーティングシステムのみがインストールされたような状態です。
その白紙の状態が育つ中で様々な事柄を獲得していき色づいていくのです。
日本人の親に育てられれば日本語を学びます。大阪の親に育てられれば関西弁を学びます。アメリカで幼少期を過ごせば英語を学びます。そしてこれを使うようになります。
これと同様に、様々な事柄を与えられ学んで育っていくのです。
また、これとは別に、何か印象に残る出来事や体験をした場合にもそれが教訓や観念として残ります。ちょっと複雑なのですが、それが実際の経験であれ、夢で見た出来事のような架空の経験であれ教訓や観念として残るのです。
例えば、いつも夫婦喧嘩している両親がいると、母親が自分を置いて家を出て行く夢を見てそれが心の中に残り、「自分は見捨てられる」という不安が心に宿り、「いい子にしなければ見捨てられる」という教訓になったりします。
また、私たちの心の中には生物としての、あるいは人間としての生物進化的な(遺伝的な)要素もあります。人が恐怖に興味を持つのは生物として生き残るために先祖から受け継いだ本能です。
これら様々な要因が積み重なってその人の心を形成しているので、人それぞれ捉え方が異なり、ストレスを感じるツボや強度が異なるのです。
私たちが出来事や環境を捉えるのは私たちが持つ認知機能によります。
目や耳、肌などから取り入れた情報を総合的に頭の中(心の中)で判断します。情報の取り込みから判断までを心理学では「認知」と呼びます。そしてこの認知の結果に基づいて行動を起こします。
この認知の過程でストレスに対して特に問題となるのが情報の総合判断です。この情報判断を行う過程でその人特有の感じ方や捉え方の癖が影響します。
例えば、誰かに遊びを誘うメールを送ったとしましょう。なかなか返事が返ってこない時、そのことをあなたは一体どのように感じ、判断するでしょうか。
「何か都合があって返事ができないのかな」と思う人もいれば「誘いを送ったことが迷惑で返事できないのかな」と思う人もいます。また、「そのうち返事が来るだろう」のような捉え方をして平気な人もいます。
この例の中で一番のストレスは「誘いを送ったことが迷惑で返事できないのかな」と思うことではないでしょうか。
この考え方の中には「私は迷惑な存在」という自己概念と自信(自己肯定感)の欠如が見受けられますね。
人がこのように捉えてしまうのには先に述べた通り様々な“そうなる理由”があるのですが、それは既に過ぎ去った過去の事として仕方ないとしても、ストレスを感じる捉え方であり、結果としては芳しくはないのではないでしょうか。
できればもっとお気楽に捉えることができると、ストレスも感じなくてすみますね。
この捉え方(認知)はある意味心の癖ですから、練習によって是正することができます。
ただ、今までこの方法で生きてきたのでそれを変えるのが怖いと思われる人もおられるかもしれません。
それはある意味生物としての防衛本能で致し方ないことですが、もう少しストレスを感じないようになりたいと思われる場合には、以下を心がけていただいたり、試していただければと思います。
1:自分を責めない
私たちが自信を持てないのは、自分で自分を責めているからです。「私には価値が無い」「〇〇ができない」「自分は嫌われる」など自分を責めてはいないでしょうか。この原因には様々な原因や根深い事情がありますが、とりあえず自分を責めていると思ったら、そこから離れる練習をしてみることです。これも心の癖ですから、練習すれば改善されていきます。
その具体的な方法としては、自分を責めていると感じたら深みにはまらない為に「まぁいいか」「だって人間なんだもん」と声に出してみたり、心の中で言ってみたりしてください。自分を責める機会が減るほど、自己肯定感があがってきます。そうすると、ストレスも感じにくくなります。
2:考えても自分で決められないことは考えない
例えば、今日何をするか、どのような服を着るか、何を食べるかは考えれば結論が出せます。これは考えていいことです。しかし「あの人はどう思っているのだろう」と人の気持ちを推察したり、「明日怒られるかもしれない」と思ったりしても、これは自分自身で決められない事柄です。
これは、ある意味来るべき危機に備えるための防衛的な思考であり、決して良いケースは浮かばず、悪いケースを想定することになります。悪いケースを思い浮かべることはストレスそのものであり、決していいことはありません。
そのような自分で決められない事柄を考え始めていることに気がついたら、こちらも深みにはまらないように考えをストップする必要があります。その際には「なるようになるさ」と声に出してみたり、心の中で言ってみたりしてください。
3:コラム法を使ってみる
私たちには何らかの出来事や状況に接したときに咄嗟に自動的に思いつく考えやイメージがあります。これを心理学では「自動思考」と呼びます。これは先般からお話ししている様々な原因に起因しており、人によりその内容も様々です。
この自動思考は自身の感情に大きく影響を及ぼします。自動思考がネガティブなものであると、起こった出来事が適切に(客観的に)捉えられない「認知の歪み」が生じます。
この認知の歪みを是正する方法にコラム法があります。客観的に物事を捉えるための練習です。
コラム法には3コラム法、5コラム法、7コラム法がありますが、今回はとっつきやすい3コラム法についてご説明します。
コラムとは、枠の意味で、3コラム法では3つの枠を、7コラム法では7つの枠を作り、その中に記述していくことで現任となる自動思考を認識し、違う見方ができないかアプローチしていきます。
先ず、自分が不快に感じた出来事を正確に第1コラムに記述します。先の例で言えば「友人にお誘いのメールを送ったが返事が来ない」です。
次に第2コラムにその時どんな気分になったかを書き出します。「悲しかった」「腹が立った」など、その時の気分、気持ちを書き出します。
第3コラムにその時に頭に浮かんだ考えやイメージを書きます。先の例で言えば「誘いを送ったことが迷惑で返事できないのかな」ですね。あるいは、複数の考えやイメージが頭に浮かんだ場合はそれら全てを書き出します。そして書き出した中で一番強く考えた事柄に印をつけます。
この印をつけた一番強く考えた事柄が主に自動思考による認知の歪みを生んでいます。
この自動思考は、様々な出来事において、共通していることも多いです。
自動思考が3コラム法で把握出来たら、今度は別の考え方が無いか探ってみます。
そうすると、先の例では「何か都合があって返事ができないのかな」が出てきたとします。
そう考えることもできると知ることで、自動思考に少し働きかけることができて、「認知の歪み」を少し是正することができます。
その結果、起こった事柄に対するマイナスの感情も緩和され、ストレスが減ります。
冒頭でもお話ししましたが、世の中には様々な人がいて、その人たちやその人たちが作り出す社会と接しながら生きているので、ある意味ストレスを感じることは仕方がないことかもしれません。
しかし、ストレスを感じて苦しむのは自分です。ストレスを感じやすい思考(認知)を緩和して、できるだけ楽しい人生を送りたいものですね。
(完)