こんばんは
神戸メンタルサービスの平です。
数年前に流行ったテレビドラマの『過保護のカホコさん』を憶えている人は多いことでしょう。
少子化が進む昨今は、子どもたちがとても過保護に育てられています。
両親はもとより、おじいちゃん、おばあちゃんも孫中心に生活を回していたりするので、子どもたちはなにもしなくても、いろいろなことができてしまったりします。
そのため、思春期を迎えた子どもたちは、シンデレラのような物語に憧れます。
みなさん、シンデレラの物語は知っていますよね。
じつは、シンデレラはまさに過保護のカホコさんなのです。
まず、おねえさま方のように舞踏会に行きたいと思ったものの、シンデレラには着ていくドレスがありませんでした。
でも、それを手に入れるには、彼女はただ嘆いているだけでよかったのです。魔法使いのおばあさんが出てきて、ドレスも靴もすべて用意してくれたのですから。
そして、魔法使いのおばあさんは段取りもすべてしてくれました。シンデレラはそれに乗っかって舞踏会に行き、王子様に見初められたわけです。
深夜12時、魔法が解けるのを怖れたシンデレラは王子様の前から姿を消します。
その後、王子様の命を受けた兵隊さんによって見つけ出されるわけですが、それまで、けっして自分から名乗り出ることはありませんでした。
つまり、すべてをまわりの人々にセッティングしてもらって、シンデレラの人生は大きく変わったわけです。
自分ではなにもしない、まさに過保護のカホコさんだったわけですね。
このストーリーと同じように、過保護に育った最近の若い世代の人々はこんなふうに考えます。
「だれかが私を見初め、好きになってくれないかな。そして、その素敵な王子様が私の人生の主役となり、私に奉仕してくれないかしら‥‥?」
けれども、こう思うのは女子だけでなく男子も同じ。なにもしない同士なので、恋愛どころか、二人の間にはなにも起こりません。
「私はなにもしないけれども、素敵な王子様が来てくれたなら、心はときめくことだろう」
そんなことを思っているので、自分から人を好きになろうとか、人のことをどのように愛そうかという発想が生まれる余地はありません。
先日も、「恋愛とかしたいんですけど、なにも起こらないんです。みんな、どうやって恋をしてるんでしょう?」という相談を受けました。
彼女は大学生なのですが、コロナ禍がはじまって以来、授業はオンラインに替わってしまったので学校に行くことがないそうです。
サークル活動もストップしているので、学校の同級生や先輩たちとも会う機会がありません。
彼女の場合、ご両親が心配し、アルバイトすることも許されていないので、人と会う機会がまったくないというのです。
私はこう聞いていました。
「オンラインを使って、サークルの人たちとコミュニケーションをとるとか、そんな機会もないんですか?」
「よく知らない人は苦手です。なにを話せばいいのかがわからないので‥‥」
「だれだって、初めて会った相手に最初から親密感を感じることはないですよ。コミュニケーションを重ねていくうちに、少しずつなかよしになっていくものです」
「そうでしょうけど‥‥。近づいてきてくれるならまだしも、自分からどう近づいていけばいいのかがわかりません」
どうやら、人との距離を縮めることに不安や恐れを感じている様子です。
しかし、彼女は自分がそんな不安や恐れをもっていることを隠していたんですね。ですから、人から見て悪い態度をとってしまうことが多く、まわりからは「笑顔の少ない人」、「まわりの人に興味をもたない人」と映っていたのです。
私はこんなアドバイスをしました。
「人に近づくのが苦手なの、と、まわりの人に言ってみてください。それだけであなたの人生は変わりますよ。ぜったい、言ってくださいね」
そして、彼女が実践してみてくれたところ、彼女の悪い態度の原因がコンプレックスにあったことをまわりの人が知るようになり、まわりの人々がやさしく接してくれるようになったというのです。
コンプレックスを隠すことによって、すべてを失うことがあります。反対に、それを伝えることで、あなたは一気に“わかりやすい人”になることもできます。
そこから人生がはじまることもしばしばあるようですよ。
来週の恋愛心理学もお楽しみに!!