失恋、あの恋を手放せない本当の理由はなんだろう?

あの恋を手放すのが難しいのには理由がある

カウンセリングではとてもたくさんの「忘れられないあの人」「手放せないあの恋」のお話を聞くことがあります。もう終わったことだとわかっているのに、なぜそんなにも執着をして、手放すことに苦しむのでしょうか。
この心理学講座では4回にわたり、執着のメカニズムと手放すための準備についてお届けします。

◆あの恋を手放すのが難しい理由その1:やり残しの後悔があるから

別れを切り出されたとき、真っ先にやってくるのは、やり残しの後悔という感情です。ふられた人は「自分のどこか悪かったのだろうか?」と過去へと自分を辿っていきます。

恋愛に限りませんが、人はやったことへの後悔よりも、やり残したことへの後悔のほうがずっと大きい傾向があります。なぜならば、やった後悔はやった結果があるから。

しかし、やり残した後悔はやった結果がわかりません。だからこそ「あの時ああしていれば、こうなったかもしれないのに」といろいろな展開を描いてしまうわけです。

すると、ふられた人は、やり残しの後悔をなんとかしてやってみたくなります。つまりは、復縁したくなります。するとこう言いたくなるのです。「私の悪いところを全部直すから、もう一度だけチャンスをちょうだい!」と。

ふった人からすると「それは付き合っているうちに、何度も言ったはずだ」と思うので、別れを切り出した時点でファイナルアンサーになっていることがほとんど。

しかし、ふられた人にしたら「いま気がついたから、もう一度だけチャンスをもらえたら今度はうまくやれるから」と復縁することに執着をするようになるのです。

執着にはやっかいなところがあって、「強い思いを伝えれば、相手の心に届くはず」「諦めなければ、必ずこの思いに気づいてくれるはず」と、立ち去ろうとしている相手にしがみついて離れないのです。

◆執着があるときは、心の距離が近くなりすぎている

執着しているときには、必ずといっていいほど「心の距離」が近くなっています。相手の心というパーソナルスペースのなかにグイグイと入り込みすぎています。そんなときには「ヤマアラシジレンマ」が参考になるでしょう。

それはこんなお話です。冬の寒い夜、二匹のヤマアラシがいました。離れると寒いので、なんとか寄り添おうとします。しかし、近づこうとするとお互いのハリが刺すので痛いのです。離れると痛くなくなるのですが、今度は寒くて仕方ないのです…。

ヤマアラシのジレンマは、近過ぎれば傷つけてしまうし、離れすぎればさみしいのです。心理学的にはどういうことを言っているかというと、私たちは距離が近くなるほど仲良く親密になれると思っているけれど、あまりにも近くなると独占欲や支配欲、競争や嫉妬心などが出てくるので、相手を自分の思うようにしたくなる。つまり、心の距離が近くなるほどに、ネガティブな感情も起こりやすくなるのです。

執着しているほうは離れたくないので、「行かないで」とグイグイと近づく。執着されているほうは「離れてくれよ」と拒絶をする。拒絶されると「離れたくない」ともっと強くしがみつく。すると、お互いに針が刺さって、ふるほうだってふられるほうだって、傷ついてしまうわけですね。

そんなときどうしたらいいかは、もうおわかりですね。そう、適切な距離をとることです。執着は「強いしがみつき」なので、しがみついている手をゆるめなければいけません。

しがみつきをゆるめることを「手放し」といいますが、相手との関係性を断ち切るわけではなく、お互いにストレスを感じにくい距離感に戻すことも含まれているのです。

◆後悔がもたらすものは自己攻撃

やり残しの後悔があると、どうしても自己攻撃をします。「どうしてあの時ああしなかったのだろう」とひどく自分のことを責めるのです。

しかし、ふたりの関係性が終わりをむかえようとしているとき、自分がふったせいで自己攻撃をしている人を見たら、罪悪感を感じさせてしまいます。相手に罪悪感を感じさせたままで、追いかけたとしてもうまくはいかないのです。

別れを告げる人は、一度は自分が愛した人を傷つけるわけですから、とてもひどいことをしているという罪の意識があります。たとえるのならば、自分がズタズタに傷つけてしまった人を助けずに置き去りにするような気分です。

そんな人に「行かないで」としがみつかれると、さらに罪悪感を刺激されてしまうので、「じゃぁ、やりなおしましょう」というポジティブな気持ちにはなれないのです。

◆それでも復縁を望むのであれば

それでも復縁を望むのであれば、手放すべきは「自己攻撃」です。「あなたのせいで私はこんなに自分を責めている。たくさん反省したからもう許して!」という人にしがみつかれて、うれしい人はいません。なので「どんな自分ならば近づいても良いのだろうか?」ということに取り組む必要があります。

こういうとき「どんな自分なら彼に振り向いてもらえるのかな」と考える人が多いかもしれませんが、その考え方そのものが彼に執着していることにお気づきでしょうか?

これは彼軸であって、自分軸ではないですよね。だから、自分に軸を戻して「どんな自分なら自分でも好きだろうか?」と考えて、その自分になることにチャレンジをしてみませんか。

だって失恋はバネになるのですよ。失恋をきっかけにして、見違えるように変わっていく人がいるのは、彼軸を手放して自分軸を手に入れたからです。

自分でも好きな自分になったことにより、結果的に「もっと素敵な人」に出会うこともよくあることだと、最後に書き記しておきます。

(続)

心理学講座4回シリーズ/同シリーズ記事はこちら
  1. 失恋、あの恋を手放せない本当の理由はなんだろう?
  2. 別れた恋人のメールアドレスを消去できる、できない?
  3. ちっとも私を大切にしてくれない人、なのに執着をしてしまう
  4. 執着を手放したければ、手放すことに執着しないこと
この記事を書いたカウンセラー

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失恋からの立ち直り、都合のいい女からの卒業、本気の婚活、浮気や離婚問題を乗り越える、夫婦関係の修復、離婚から再出発など、恋愛&男女関係の相談が多く、恋愛・結婚生活に悩む人の駆け込み相談所的な存在である。 30歳からのうまくいかない恋愛と40歳からのこじれた男女関係の解決を提供している。