笑い〜大阪・天満天神繁昌亭にて〜

先日、落語を聞きに「はんじょうてい」こと、天満(てんま)天神繁昌亭へ行
ってきました。桂ざこばさん(関西では有名な方です)が四人のお弟子さんと
一緒に五人で出演され、中入(休憩)をはさんでの二時間超があっと言う間に
すぎました。噺家(はなしか)さんは一門の序列ごとに演目をなさることが多
いのですが、ざこばさん一門の場合はプロローグの顔見せで、出演者の方が舞
台の横一線にならんで座ったざぶとんの下に番号札があって、その番号順に進
行されます。顔見せのご挨拶が終ったあと五枚のざぶとんの好きなところに座
りなおし、番号札を確かめてからスタートってふうに。
天満天神繁昌亭(以下:繁昌亭)とは、昨年2006年9月15日に開場した
落語専門の定席小屋(じょうせきごや・・・毎日公演する小屋)です。街中の
お社さん・大阪天満宮(夏の天神祭でおなじみ)のそばにあって、日本一長い
とされる天神橋筋商店街の気さくな雰囲気と、オフィス街が同居する中に位置
します。


足まわりも地下鉄谷町線・堺筋線の南森町駅、JR東西線の大阪天満宮前駅と
三線二駅のロケーションは、ナニワの北の玄関口・梅田(大阪駅前)からもひ
と駅の交通至便なところです。
東京では何軒かある落語の定席小屋は、大阪では六十年ぶりの復活で、以前は
歓楽街を中心に点在したと聞きます。映画やお芝居を見に行くみたいに、気さ
くでいつもそばにあって、商いの街・商都大阪を象徴するシンボルの娯楽「お
笑い」のひとつとして親しまれたのが落語です。商都大阪はすなわち、笑都大
阪でもありました(笑)。
日々の暮らしや身近な出来事を面白おかしくこっけいに、時には大げさに、ま
た時にはユーモアをまじえた笑い話を大阪弁で伝える上方落語は、伝統芸能と
して継承されようとしています。代々受け継がれた古典ネタもあれば、オリジ
ナルの創作物もあります。
この上方落語をのちのちまで継承するため、吉本興業さん・松竹芸能さん・米
朝(桂米朝さん)事務所さんを中心にその他関連団体さんたちが、プロダクシ
ョンの枠を超えたプロジェクトとして立ち上げられたのが繁昌亭です。例えば
建築現場の作業場の中には、ゼネコンさんが何社か集まり、一緒になって物件
を作り上げることがあります。これを共同企業体・JV(ジェーブィことジョ
イントベンチャー)形式で立ち上げると言います。ってことは、繁昌亭はいわ
ば、お笑いのジョイントベンチャーと考えていいのかもしれませんね。出演者
の方も、プロダクションや事務所を代表して舞台に立つ、よりすぐられた方と
考えていいかと思います。取りまとめ役は、桂三枝さんが会長をされてる上方
落語協会さん。
僕が行った、二カ月おきの出演・桂ざこばさん一門の日は、平日の夜にもかか
わらず前売は完売で当日は立見券でした。立見券を販売してくれた方に聞くと
繁昌亭の席数は、補助席を入れて236人との事。ただしお客さんにも急な用
事が出来て来れなくなることがあり、当日何%か空席が出る時は立見客も途中
から座れるとのことでした(幸いこの日は空席出て、僕を含めた立見の方全員
座れました。)
中に入ると、客席と舞台の距離が近く、公演はマイクなしです。噺家さんの熱
気が、息吹が、表情がまじかに伝わります。百年作りの頑強な造りにしたとさ
れる繁昌亭は、外見の小さな小屋のイメージよりもお客さんがいっぱい入れる
ような、器の大きい建物のように感じました。ファンの年齢層は幅広いけども
未就学の子供さんの入場を遠慮してもらってるのがちょっと残念。
さて、ここからは笑いの効用について簡単にのべます。笑いすぎてお腹が痛く
なった経験はありませんか?笑う時には様々な部分の筋肉を使うので、それが
内臓の働きや血液の流れをよくします。お腹をゆさぶればゆさぶるほど、呼吸
が腹式になってゆったりリラックスします。また、糖尿病で苦労されてる方が
漫才や落語を聞いた後は血糖値が低下したとも言われます。
一方で「笑い」は、ガン細胞を抑えるNK(ナチュラルキラー)細胞を活性化
し免疫力に関わるリンパ球の正常化をもたらすなどの効果があるとされます。
医療や福祉の現場で採りいれられつつあるようです。実際に大阪府(生活文化
部・文化・スポーツ振興室・文化課)では平成17年度から「笑いと健康推進
事業」が始まってます。
笑いは病気の予防や治療的な効果をもたらすし、脳を活性化して思考力や理解
力を高めたりストレスを軽減するなど、老いを遅らせるアンチエイジングの効
用もあるようです。お笑い番組やコメディ映画を見たり、マンガを読んだりと
か、きっかけはいくらでもあるかもしれません。
ただし冷笑は、あまり好ましくないと思います。リラックス感がない緊張した
笑いだからです。僕が昔、俳優の勉強をした時にいろんな笑いの発声を教わり
ました。特に笑いは、五十音の「ハ行」を使います。「ハ・ヒ・フ・ヘ・ホ」
の「ハ」は、ポップコーンみたいにはじけた素直な笑いと、感情をおさえたよ
うな笑いの2パターンがありますが・・・「ハ」以外の音はどうでしょう?こ
れを読みながら実際に笑ってみてもらえますか?
「ヒヒヒヒヒ(自虐的ですよね。)」「フフフフフ(時代劇の悪徳役人&商人
が低い声で無表情のまま笑いあうみたいでちょっと怖いですよね。)」「ヘヘ
ヘヘヘ(照れ隠しみたい。)」「ホホホホホ(嫌味で意地悪そうな感じしませ
んか?)」
聞いてていかがですか?それこそ、笑いの向こう側に隠された感情があるよう
な感じです。耳障りで聞き心地はよくないですよね。だから「笑う」なら、は
じけた健康的な「ハ」の笑いがおすすめです。「ハハハハハ。」って。
会場から二年目に入った繁昌亭。定席小屋の新鮮さで多くの方がみえた一年目
以降が勝負と言われてましたが、なんのなんの。大入り満員の繁昌亭はとても
元気で活気にあふれてます。
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