iphone時代の社員教育

電話応対というのはいつの時代も社員教育の基本といえます。適切な言葉使いと明瞭な受け応えは、ちゃんとした訓練を受けた経験がないと意外なほど難しいもの。時節がら、各企業では新入社員研修が行われている頃だと思いますが、ビジネスにおいて電話対応が重要であることに今も昔も変わりはありません。ところが、携帯電話が当たり前の現在では固定電話しか無かった頃には不要であった配慮も必要になる場合があります。

◆ポケベルから携帯へ
20年ほど前までは職場でも家庭でも電話といえば固定式が当たり前でした。ところが今では携帯電話が当たり前。同僚であれ、取引先であれ、ダイレクトに要件のある相手につながるから手っ取り早し、煩わしい取次ぎを飛び越えてビジネスのスピードも上がります。また、喫茶店でファミレスで、時には街中を歩きながら簡単な打合せやアポイントぐらいならいつでもどこでも済ませてしまうこともできます。

◆感情は伝播する
いつでもどこでも話ができる携帯電話。

先日も電車の中で電話をしながらしきりと頭を下げている若い会社員を見かけました。クレーム対応でもしているのでしょうね、大変だな、と同情する気持ちもあるのですが、周りで見ていてあまり気分の良いものではありません。

もちろんマナーの観点からもそうなのですが、心の観点から見てもその行為は困った状況を生み出します。

私たちの心はほぼオートマティックに、他人の感情に影響を受けるようにできています。それは時に共鳴するように伝播し、また時に反作用のように抵抗や軋轢を生み出します。

クレームの電話に恐縮している会社員を見ながら、イライラしたり、腹を立てる人は多いでしょう。また、困り果てているその表情に悲しい気分になったり、怒られている様子を見ながらあたかも自分が怒られているかのようで不安な気持ちになる人もいるかもしれません。

感情というのは、水面に広がる波の様に周りの人へと伝播していきます。

電話を受けながらあなたの感じている気分や感情が、周りの人達にどんな影響を与えているか、公共の場所においては自分の感情が周りの人たちに与える影響力の大きさを念頭においた対応が求められます。

もしもあなたがそれを怠れば、電話を切った後、思わぬトラブルがあなたを待っているかも知れません。

◆変わるものと変わらないもの
いつでもどこでも繋がってしまう携帯時代。受ける側に配慮が必要であると同時に、架ける側にも相応の配慮が必要です。

そもそも電話というのは、架ける側の都合で通話相手の時間を拝借する行為ともいえますから、一方的に話し始める前に相手の都合を聞くのが礼儀。携帯電話なら尚のことです。

電車の中かもしれないし、大事な会議を抜け出して電話に出てくれているのかもしれません。場合によっては休暇で家族と一緒に過ごしているのかもしれません。たとえ先方が「大丈夫」と言っても、声の大きさやトーンから、状況を察してあげられれば言うことなし。大切な話であるほど、お互い誤解のないよう配慮することは必須でしょう。

いつも声の大きな人がヒソヒソ声を忍ばせているなら、それはどんな状況なのか?どこかイライラ焦ってる様子が伝わってくるとしたら、それはどんな環境なのか?

携帯時代の私たちには、「今、電話よろしいですか?」というひと言だけでなく、通話相手の心象にまで配慮できるイマジネーションが求められているのです。

◆iPhone時代の社員教育
いつでもどこでも電話を受けられるからこその心構えと通話相手を慮るイマジネーション力。携帯時代の私たちに求められるのは、よりよい環境で話すための努力といえるかもしれません。

そしてもうひとつ心掛けておきたいことがあります。それは「選択する」こと。

iPhoneに代表されるスマートフォンにより私たちは、パソコンと変わらない機能をポケットに携帯できるようになりました。iPhone時代は通話だけでなく。メールやインターネットなどあらゆる業務をいつでもどこでも行える時代といえます。

商談やミーティング中、架かってきた電話にあなたならどう対応しますか?面談相手に断った上で電話を受けるでしょうか?それとも留守番電話へ転送するでしょうか?もしも緊急のメールが入って来たら?

もちろんどうすべきかは、時と場合によるでしょう。ただ面談相手と電話やメール、どちらを選択するかの判断は、上司でも同僚でもなく、その場にいる私たち自身に委ねられています。

iphone時代の社員教育では、あとあと後悔することのないよう「今、何に集中すべきか」を判断し選択する力の育成が求められているのかもしれません。

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