少数意見が集団の意見を動かす!~マイノリティー・インフルエンス~

集団で意志決定を行う場合、その集団のリーダーが意志決定に対して強い権限を持ち、そのリーダーの判断で物事が決定される場合もあります。
例えば、責任と権限を持つ社長をその会議のオーナーとして会議が招集され、討議ではなくまるでヒアリングのような形で行われる会議がそれに当たります。
一方、本来の意味での、集団での意志決定は、メンバーが意見を交換してメンバー間の合意や多数決により決定される形です。
後者の場合は、その集団のメンバーの意志が決定に反映されるのですが、少数派の意見が集団の意見になりうる場合があります。
マイノリティ・インフルエンス(少数者の影響)という現象です。
マイノリティ・インフルエンスには大きく2種類あります。
1つは、「ホランダーの方略」と呼ばれるものです。
これは、その集団に対し、危機を救った、何らかの利益をもたらしたなどの実績の持っている人が少数派になったとき、多数派はその人の意見に傾く場合があるというものです。
「あいつが言うんだから」とその人物に対して信頼するに足る根拠を見いだせると、多数派が自分の意見についての“自信”がぐらついてくるのです。
もう1つは、「モスコビッチの方略」と呼ばれるものです。
これは、少数派がぶれずに一貫性を持って意見を述べ続けると、集団の意見がそちらに傾く場合があるというものです。
少数派に一貫して意見を述べ続けられると、多数派の内から徐々に自分の意見に自信が無くなってくる人が現れ、まるでリバーシ(オセロゲーム)のように石がひっくり返っていきます。私たちが集団の中で少数派になると、自信が無くなって多数派の意見に迎合してしまったり、「勝つ、負ける」の意識で戦ったりします。
前者はもちろんのこと、後者も当初の“集団における最良の意志決定”という目的から外れ、ぶれた主張になりがちですので、少数派の意見が通る可能性は低くなります。
大切なことは、例え少数派であっても、目的意識をしっかりと持ち、自信を持ち、信念を曲げず、一貫性のある主張を冷静に繰り返していくことです。

ここで、この状況を上手く描いている映画を1つご紹介します。
ちょっと古い映画になりますが「十二人の怒れる男」(12 Angry Men)という映画です。父親殺しの罪に問われた少年の裁判で、12人の陪審員が評決に達するまで議論する様子を描いた映画です。法廷に提出された証拠や証言は被告に圧倒的に不利で、12人の陪審員が全員一致で有罪か無罪かを評決するのですが、陪審員の大半は少年の有罪を確信していました。
しかし、ただ一人の陪審員だけが少年の無罪を主張しました。
彼は他の陪審員たちに、固定観念に囚われずに証拠の疑わしい点を一つ一つ再検証することを要求していったのです。
その陪審員の熱意と一貫性のある主張によって、当初は少年の有罪を信じきっていた陪審員たちの心にも徐々にある変化が現れていく様を描いた映画です。
機会があれば、是非一度ご覧いただければと思います。

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この記事を書いたカウンセラー

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恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。