私は、ポジティブなイメージとネガティブなイメージの両方を同時に感じます。
先ず、ポジティブなイメージとしては、何かを極めている、真剣であるというイメージです。
一方、ネガティブなイメージとしては、頑固とか、自分のやり方に固執しているというイメージです。
「こだわり」は、いずれも自分のやり方を通しているという点では同じなのですが、そのこだわりを誰のためにやっているかで与える印象が違うのです。
仕事の上で、何かにこだわるという事はとても大切な事だと思います。
この「こだわり」がないと、誰彼の意見に翻弄されて思っていた結果と実際の結果が大きく異なってしまい成果が得られないという事になりがちです。
ソニーがウォークマンを開発したときの事、徹底的にこだわった事が小型にする事だったそうです。
ウォークマンのアイデアが生まれたとき、まだまだ音楽を持ち運ぶなどという時代ではなかったので「こんな商品売れるの?」という目で見られていたそうですが、徹底的に小型化する事で弁当箱ぐらいの大きさの試作品から、手のひらサイズの商品になったそうです。
その過程では、開発者が必死に小型化して「もうこれ以上小型にはできません」と悲鳴を上げても、試作品を水の中に入れて「まだ、空気の泡が出るじゃないか」と限界を超える小型化を何度も何度も要求されたという逸話を聞いた事があります。
この逸話が真実か否かは別にして、あのサイズにできたからこそ、そこまで小型化したからこそ、小型化にこだわったからこそ、世界中で爆発的なヒット商品になったのですね。
ウォークマンの小型化は、企業として売れる商品を作って儲けるという側面もあるでしょうが、どうしたらお客さんに喜んでもらえるか、どうしたらお客さんが欲しいと思ってくれるかにこだわった結果でもあると思います。
お客さんがその商品を手にしたときの笑顔を見たい、使っているときの笑顔を見たい、そんな誰かを笑顔にするためのこだわりがウォークマンのヒットを生んだのだろうと思います。
私達の日常の仕事においても、誰かを笑顔にするための「こだわり」を持つ事は容易にできます。それは、お客様であっても、社内の人間であっても、サプライヤーの人であっても構わないのです。
例えば、
社外の人からの連絡にその場で対応できなかった時には、必ずすぐに連絡をとる
気分がどんなに悪いときでも毎日笑いながら挨拶する
ステップラーはページをめくりやすいように止める
どんな小さなこだわりでも構わないのです。そうすると、必ずそんなあなたを見ている人が現れます。
そうしているあなたの気持ちに反応してくれる人が現れます。
その結果、あなたの株があがっていくのです。
一方、誰かを笑顔にすると思っていても、実は気づかないうちに自分自身が笑顔になるためにやってしまうこだわりというものもあります。
このこだわりは、冒頭に書いたネガティブなイメージのこだわりになってしまい、自分の株を下げてしまいます。
例えば、
自尊心を満足させる為の他人との競争でのこだわり
自分の価値を認めさせる(認める)ためのこだわり
自分が愛される存在である事を確認する為の犠牲的なこだわり
自分の正しさを証明するための正義へのこだわり
です。
一例として、ルールを守る事にこだわるという事を考えてみます。
ルールを守る事にこだわってしまうと、ルールの存在する意味合いや背景を無視するようになります。ルールを守る事はとても大切な事ですが、ルールは人間の作り出したものですから元々全ての起こりうる事柄を網羅しているものではありません。必ず欠陥が存在します。
ルールにこだわると、ルールを守らない事が全て悪いという感覚に陥ります。物事をよいか悪いかに分類してしまうのですね。相手の事情や状況を無視する事になってしまいます。
これでは人が笑顔になる状態を作り出す事ができませんね。
例えそのこだわりが押し通せたとしても、そこで得られるものは、ルールを使った正義へのこだわりによる、自分の正しさの証明でしかありません。自分が笑顔になるためのこだわりなのですね。
自分が笑顔になるためのこだわりは、殆どの場合、自分で自分の価値を認められない事がその源になっています。
自分で自分の価値を認められないからこそ、自分の価値を何らかの形で証明しなければいけないと心のどこかで思っているのです。
この状態から抜け出すのは、自分自身が崩壊してしまうような感覚を伴い、怖くなってとても困難な事と感じるかも知れません。
しかし、勇気を持って抜け出そうと決意できたとしたら、それは自分の価値を正当に評価する大きな一歩となるのです。
そしてその結果、自分を笑顔にするためのこだわりを手放す事ができて、誰かを笑顔にするこだわりが持てるようになります。そしてあなたの株が上がっていくのです。
さて、あなたのこだわりは何でしょうか?
それは、誰かを笑顔にするこだわりでしょうか?
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