怒られたくなくて、職場で「わからないこと」を聞けないときの解決法

職場でわからないことがあっても、つい質問をためらってしまうことはありませんか?

「こんなことを聞いたら怒られるかもしれない」
「できない人だと思われたくない」

と不安を感じる瞬間があるかもしれません。

例えば、新しく就いた職で、慣れない業務を任されたとします。
何度も資料を見返しましたが、わからないことがいくつも出てきます。
それでも、上司に質問するのが怖くて自分なりに作業を進めてしまいました。
結果、ミスが発生し、上司から指摘を受けてしまいました。

「最初から聞いていればよかったのはわかっているんだけれど、怒られたくなくて勇気が出なかった。」

質問して怒られるのも嫌ですが、ミスが発生すると、不本意ですが、結果結局怒られてしまう、ということになりますよね。

私たちは、過去に似たようなシチュエーションで傷ついた経験やイヤな思い出、怖かった記憶があると、あの時と同じように失敗したくない、恥ずかしい想いをしたくない、絶対イヤだ、と思う気持ちが、自分の行動を止めてしまう、ということが起こります。

「最初から聞いていればよかったのはわかっているんだけれど、怒られたくなくて勇気が出なかった。」

聞いていればよかったのに、と自分でわかっているのにも関わらず、怒られるのが怖くて聞けない、という場合、質問すれば怒られるに違いない!という前提が自分の中にできてしまっているんですよね。

実際、怒られるかどうかなんてわからないんです。
怒られる可能性はゼロじゃないかもしれないけれど、怒られない可能性だって本当はあるはず。
でも怒られるに違いない、という想いがある時、どうしてそう思っているのか、というのが大きなポイントなのかもしれません。

◆職場で質問すると「怒られる」と感じる背景の3つの要因

1. 過去の経験や相手への過剰な予測

過去に怒られた経験や、失敗を責められた記憶から、「こう言ったら怒られるかも」「こう思われるかも」と無意識に予測してしまう癖がついていることがあります。
特に他人の感情を読み取ろうとする人ほど、相手の反応をネガティブに想像しがちです。

例えば、親が過干渉だった場合、物心ついた時から、何をするにも「それじゃダメ」「こうしなさい」と言われ続けてきたのかもしれません。
すると、子どもは自分の判断に自信を持てなくなり、「何か言えばまた否定される」と感じやすくなります。
そして子どもは「親の顔色を伺って行動しなければならない」と感じるようになります。
その結果、大人になっても周囲の反応を過剰に気にし、相手を怒らせないように慎重になりすぎる癖がつくことがあります。

また、過干渉な親は「これが正しい」「こうあるべき」と強い基準を押し付けることが多いため、子どもは「正しくないと怒られる」「期待を裏切ると怒られる」と思い込むようになります。
これが、相手の反応を予測しすぎる習慣へとつながりやすくなります。

過干渉の干渉され続けた子どもは、結果、「自分がどうしたいか」より「相手がどう思うか」が優先される癖がつくことがあります。
このため、職場などでも相手の態度や感情を過剰に予測し、不安が先行するようになったりするケースがあります。

過干渉の親だけではなく、怒りやすい親や過度に指摘する親だと、子どもは「どうせまた怒られる」という学習が無意識に形成され、ミスや質問を避けようとする癖がついたりします。

2. 自己肯定感の低さ

自分に価値があると感じられない場合、他人からの否定を「自分の価値を決定づけるもの」として捉えがちです。
例えば、質問した結果「そんなのもわからないの?」と言われたとすると、単なるスキル不足や知識不足への指摘ではなく、自分の存在そのものが否定されたように感じてしまったりします。

自分を肯定する力が弱いと、どうしても他者の言葉や態度に敏感になり、他者評価に依存しやすい傾向がでます。
そのため、些細な仕事の間違いの指摘だとしても、指摘を受けた側は「私はダメな人間なんだ」と思い込みやすくなります。

質問をすること自体が「自分の価値を試される場面」と感じられ、心理的負担が大きくなります。
そして、間違いを指摘されたり、否定されたと感じると、それは仕事に対してではなく、「否定=自分の価値の否定」と感じてしまったりします。
そうなると、怒られたりミスを指摘されたりすることを過剰に恐れ、最初から行動することを控えるようになります。これが「わからないことを聞けない」という状況につながるのです。

3. 完璧主義

完璧主義の人にとって、怒られることは「自分が不完全だと証明される瞬間」であり、それを避けたい心理が働きます。
小さな指摘でも、大きな失敗のように感じるため、過剰に「怒られる」と感じるのだと思います。

例えば、上司が「次回はこうしてね」と冷静に言っただけでも、「自分ができない人間だと思われた」と感じてしまう、とか、「そんな基本的なこともわからないの?」と言われる可能性を恐れて、質問する前に悩み続けてしまう、とか。

完璧主義の人は、相手の反応を事前に想像して準備する傾向があります。
特に否定的な反応を予測しやすく、「こう言われたらどうしよう」「こんな質問をしたら呆れられるかも」と悪い方向に考えがちです。

また、過去に怒られた経験がある場合、特に完璧主義の人はその記憶を引きずりやすいので、「また怒られるかもしれない」と考え、同じ状況を避けようとする心理が働いたりもします。

すると、以前、似たような状況で「なんでこんなこともわからないんだ!」と怒られた記憶が蘇り、それが質問をためらう原因になったりするのです。

完璧主義の人は職場の雰囲気に敏感です。
ピリピリした職場では「質問しただけで、何か言われるかもしれない」と感じ、質問を諦めてしまう、なんてこともあるかもしれません。

◆「質問するのが怖い」を解消する心の整え方

怒られたくないがために質問できない人がその状況を改善するには、心理的な側面からアプローチすると効果的です。

1. 怒られることの「意味」を見直す

怒られることを「失敗」や「自分の否定」と捉えるのではなく、改善のためのフィードバックと捉え直すことが大切です。

怒られた、と感じると、自動的に「失敗した」とか「否定された」と心が感じて、そう受け取ってしまいがちですが、まずはそんな自分に気付くことが第一ステップ。

それに気付いた時、「なぜ怒られたのか」もしくは「なぜ指摘を受けたのか」を冷静に考えてみましょう。

相手の言い方の問題など、思うところもあるかもしれませんが、まずはそこから、行動や結果の改善点を見つけるために活用してみよう、という意識を持ってみると、何か違う意味合いが見えてきたりします。

「怒られる(指摘される)=成長の材料」と意識することで、恐怖心を軽減できるようになります。

2. 「完璧でなくてもいい」と自分に許可を出す

完璧主義が原因で質問をためらっている場合には、「すべてを自分一人でできる必要はない」と自分に言い聞かせることが必要です。
これはきっと仕事だけでなく、日常生活全般においても「完璧でなければいけない」というプレッシャーを自分に課しがちです。

「完璧でなければいけない」という思い込みが日常に浸透していると、リラックスする時間がなくなり、ストレスが蓄積していきます。
そして、仕事でも私生活でも「失敗できない」「隙を見せたくない」という恐怖心を強めてしまいます。

まずは自分が「失敗できない」「隙を見せたくない」という想いを強く抱えている、ということに気付くことで、完璧主義を手放す第一歩が始まります。

職場では、たとえば「この進め方で問題ないですか?」と確認するなど、まず小さな質問から始めてみるのもおススメです。

質問することや、人に頼ることを、「自分の成長や改善のための行動」と前向きに捉えてみましょう。

特に、人に頼ってはいけない、全て自分でやらなくては、と思っている人には、「人は頼られると案外嬉しいものだ」ということをちょっと念頭に入れてみてくださいね。

3. 質問の仕方を工夫する

実際によく怒られるのであれば、質問の仕方を工夫してみる、というのも一つの手です。

質問を直接「わかりません」と聞かれ場合と、「○○と理解しているのですが合っていますか?」というように、確認の形で質問された場合、質問される側は違う印象を受けます。

「わかりません」と言われた場合、質問者が何に困っているのか具体的に分からないため、質問を受けた側は少し戸惑うことがあります。
また、人によっては必要以上に手取り足取り説明しなければいけないと感じる場合もあるかもしれません。

「○○と理解しているのですが合っていますか?」と言われた場合、質問者がある程度の努力をしたことが伝わり、前向きな姿勢を感じます。また具体的にどこを理解していなくて、どこを理解しているかがわかりやすくなるので、質問された側も答えやすくなり、コミュニケーションがスムースに進みやすくなります。
質問された側が「この人は考えながら話している」と感じ、質問者にたいする信頼感が高まることもあります。

「わかりません」と言われると、質問を受けた側は「ゼロから始める負担感」や「具体的な方向性の不明瞭さ」を感じることが多いです。
一方で、「○○と理解しているのですが合っていますか?」と聞かれると、質問者の前向きな姿勢や努力が伝わり、質問された側としてもポジティブな印象を持ち、気持ちよく答えやすくなります。

この違いは、質問者自身の信頼感やコミュニケーションの円滑さにも大きく影響します。

◆ほとんどの人は好きで怒っているわけではない

怒られるのが怖い、と感じる人は、「怒られる」という環境に身を置いたことがあって、そこでとても怖い経験をしたり、心が傷ついたり、今でもまだその痛みがずっと残っている状態にいるのだと思います。

怖いと感じるには、怖いと感じる理由が必ずあるように、怒る側の人も殆どの場合、好きで怒っているわけではなく、「怒るには怒る理由がある」という視点も理解しておくと、感じる「怖さ」は変わってきます。

1. 怒る側の背景にある感情

怒る側が、納期が迫っていたり、責任感でいっぱいだったりして、余裕がない場合があります。
自分が追い詰められているときほど、他人に厳しくなることもあります。

また、相手に対して「もっとできるはず」と思っているとき、それが叶わないと失望感が怒りに変わることがあります。

伝え方の不器用さ、というものもあることが多くのケースで見られます。
言いたいことをうまく伝える術を持たず、「怒る」という形でしか自分の感情を表現できない人もたくさん存在しています。

2. 怒る側の真意

実は「自分が助けたい」という気持ちから来ている場合もあります。
「どうにかしてこの人に分かってほしい」と思うあまり、強い口調になってしまうこともあるでしょう。

相手の成長を願っているケースもあります。
「厳しくしないと伝わらない」と信じている人は、愛情のつもりで怒ることも。

3. 相手の視点で見てみると見えてくること

怒る側も怒られる側も、どちらも「良い仕事をしたい」「誤解をなくしたい」という思いが根底にある場合がほとんどです。
そう考えると、怒りはコミュニケーションの一形態であり、「伝え方や受け取り方」を工夫すれば、双方の関係が改善する可能性が広がります。

怒られると感じ、恐怖を感じていると、自分の感じる怖さでいっぱいになってしまいますが、ちょっと視点を変えて、どうしてこの人は怒るのだろう?という見方をしてみると、相手がとても恐ろしい相手ではなく、自分と同じ等身大に見えてきたりします。

相手のやり方が良い悪いはジャッジせず、怒りの背景を知ることで、自分の持つ恐怖感が和らぎ、相手の怒りに振り回されずに対応できるようになるかもしれません。

是非試してみてください。

あなたのお仕事時間が少しでも快適なものになりますよう、心から応援しています。

この記事を書いたカウンセラー

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こじれたパートナーシップという自身の経験から、恋愛、夫婦関係、浮気、不倫、離婚、パートナーシップの問題を得意とする。「自分を愛する」ことで本来持っている才能魅力を開花させる。「話すと元気になれる!」「そういうことか!」など、明るく明瞭なカウンセリングスタイルが好評。